研究課題/領域番号 |
19H03427
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
土田 邦博 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (30281091)
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研究分担者 |
常陸 圭介 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (10508469)
中谷 直史 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (00421264)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 筋肥大 / 長鎖非翻訳RNA / 老化筋萎縮 / GDF / 筋衛星細胞 / 間葉系前駆細胞 |
研究実績の概要 |
筋組織は、筋衛星細胞からの秩序だった分化システムが巧妙に働くことで形成されていく。近年、長鎖非翻訳RNA (lncRNA)の機能解析が進み、筋分化、筋形成、筋萎縮・筋肥大に寄与することが解明されている。マイオジェニンのプロモーター領域由来の lncRNA (myoparr)を同定した。Myoparr阻害核酸の生体投与で、マイオジェニンの発現誘導が阻害され、神経原性筋萎縮が緩和されることを示した。その経路の一つに筋萎縮抑制に作用する分泌因子の一つであるGDF5の発現誘導と下流のsmad1/5/8シグナルが関与する。 複数の筋萎縮モデルと筋肥大モデルで、複数のlncRNAの発現変化を精査した。萎縮系で共通に変化する分子と特有な発現変動を示す分子群に分別可能であることを示した。廃用性筋萎縮群である坐骨神経遮断、ギブス固定、全身性筋萎縮群である大腸がん担がん悪液質モデル、飢餓刺激を解析した。筋肥大モデルとしてミオスタチン遺伝子破壊・代償性足底筋肥大系を用いて、共通に発現変動するlncRNA, mRNA群を絞り込んだ。LncMyodとlinc-MD1の発現を指標にすることで、廃用性筋萎縮群と全身性筋萎縮群とが区別可能であった。全ての筋萎縮系で共通に変動する新規のlncRNAを複数同定した。骨格筋には, 筋衛星細胞以外に、筋線維間の間質に我々が見出した間葉系前駆細胞 (FAP細胞)が存在する。間葉系前駆細胞の除去が新たな筋萎縮モデルとなることを見出した。間葉系前駆細胞が運動神経の軸索や神経筋接合部に隣接し、老化モデルではシュワン細胞の変性が生じていることを見出した。間葉系前駆細胞由来の分泌因子であるGdf10 (BMP3b)の発現低下が加齢による筋萎縮の要因になり、老齢筋萎縮モデルにGdf10を持続投与することで筋萎縮とシュワン細胞の変性が改善されることを示すデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筋萎縮に関与する多くの新たな長鎖非翻訳RNAやタンパク質翻訳後修飾因子を見出しており、計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
発見したマイオジェニンプロモーター由来の長鎖非翻訳核酸に会合するRNA結合分子で解析中の分子があり、解析を進行させる。筋肥大モデルで発現が増加するタンパク質翻訳後修飾分子を見出したので、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子破壊マウスを作成する。網羅的質量分析計による解析で標的筋タンパクを見出しており、解析を進捗させる。
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