研究実績の概要 |
筋萎縮に関する非翻訳核酸やミオシンに着目した研究を進捗させた。骨格筋組織は、筋衛星細胞からの秩序だった分化システムが働くことで形成される。超高齢社会ではサルコペニアが大きな社会問題となっているため、筋萎縮の病態を明らかにしその対策を講じることは、遺伝性の筋萎縮性疾患に限らず重要課題となっている。骨格筋が萎縮する複数のモデルで、変動するmRNAや非翻訳RNA核酸の解析を行なった。坐骨神経遮断とギブス固定を廃用性筋萎縮群、がん悪液質と飢餓を全身性筋萎縮群に分類した。筋肥大としてミオスタチン遺伝子破壊による筋肥大モデルと代償性足底筋肥大系を用いた。筋萎縮系で共通に変動するlncRNAを複数同定した。ミオシン重鎖は骨格筋の収縮に必要なタンパク質複合体であり、アクチンとの相互作用により筋収縮に関与する。速筋型ミオシンは、Myh1,2,4にコードされた速筋型ミオシン重鎖(MyHC)から構成される。Myh1,4に同時に変異を導入することで、MyHC-IIxとIIbを同時に欠損した二重変異体モデルを作製した。生後3週以降でサルコメア構造の崩壊を伴う重度の筋萎縮を示した。筋肉内繊維化が見られ、その起源となる間葉系前駆細胞数は増加が見られた。筋萎縮系シグナルであるミオスタチン・アクチビンの下流分子Smadのリン酸化は増加しユビキチンシグナルも増加していた。血中グルコースが低下し、栄養障害が示唆された。速筋型ミオシンの機能を制御する翻訳後修飾を見出し解析を進捗させた。網羅的解析を取り入れ、がん悪液質治療への応用研究にも取り組んだ。
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