研究実績の概要 |
SLRP familyであるOMDとPRELPは、我々が癌抑制機能を保持していることを初めて発見した新規癌抑制遺伝子であり、その機能や発現調節機構に関しては、依然不明な点が多い。そこで本研究課題においては、これら新規癌抑制遺伝子の機能を、システムバイオロジーに基づき統合的に解析し、さらに分子生物学や生化学的手法を用いて詳細な機能解析を行ってきた。成果であるが、まずOMDとPRELPの膀胱がんにおける機能解析の結果をまとめて論文を発表した(Cancers, 12, 3362 [2020])。また、OMD遺伝子が配座される染色体上の領域9q22は、膀胱がんで高頻度に欠失が観察される領域であることが分かっていたが、PRELP遺伝子に関しては発現抑制のメカニズムは分かっていなかった。そこで、PRELP遺伝子の膀胱がんにおける発現抑制機能を解明することを目的に研究を進めた結果、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を処理することで、PRELPの発現が上昇することを突き止めた。さらに、ChIP-qPCR解析により、PRELP遺伝子プロモーター領域のヒストンH2B-K5のアセチル化が、PRELP発現抑制解除のマーカーであることを見出した。治療という観点では、既に皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬として承認されているヒストン脱アセチル化阻害剤SAHAを抗癌剤cisplatinと併用して膀胱癌細胞株に処理したところ、効果的に膀胱癌細胞の増殖を抑制することに成功し、これらの成果をまとめて論文を発表した(Clinical Epigenetics, 14, 147 [2022])。その他にも、PRELPは網膜芽細胞腫において癌微小環境を制御することで腫瘍の進行に寄与し、PRELPの欠損は細胞間接着を低下させ、EMTを促進することを明らかにし、論文発表を行った(Cancers, 14, 4926 [2020])
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