研究課題/領域番号 |
19H03431
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
城村 由和 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40616322)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 細胞老化 / 個体老化 / 加齢性疾患 / 細胞周期 / 慢性腎不全 |
研究実績の概要 |
細胞老化は個体老化・加齢性疾病の発症・進展に深く関与することが知られている。2021年度は、前年度に引き続き、生体内の老化細胞を一細胞レベルで同定・単離・トレースを可能にした『p16-CreERT2マウス』の老齢個体のサンプルを用いた一細胞RNA-seq解析データを基に詳細な遺伝子発現解析を行った。様々な臓器・組織における老化細胞の一細胞RNA-seq解析を行ったところ、自然加齢においても多様な細胞種が老化細胞になることや細胞種ごとに異なる特徴的な遺伝子発現プロファイルを示すことが明らかになった。一方、トラジェクトリ―解析による老化誘導の要因の解明を試みたが、解析に十分なデータが得られておらず、詳細な分子メカニズムの解明には至らなかった。 一方、生体内における老化細胞の役割を解明するために、横紋筋融解症急性腎障害において老化細胞の動態や除去による影響の解析を行った。その結果、この急性腎不全モデルにおいて老化細胞は腎臓皮質中の近位尿細管上皮細胞に多く認められること、それを遺伝学的に除去すると腎機能が改善することが分かった。 さらに、老化細胞の特徴的な機能の一つであるSASPと呼ばれる炎症亢進機能を抑制できるマウスモデルの樹立に成功した。このマウスモデルにアデニン食餌性慢性腎不全を誘導したところ、野生型マウスでは腎臓皮質に認められる老化細胞の蓄積がほとんど起こらず、さらには慢性腎不全の代表的な特徴の一つである線維化も抑制されることが明らかになった。この結果は、少なくとも慢性腎不全においては、老化細胞によるSASPがパラクリン的に働くことで周囲に細胞老化を引き起こすこと、それによって慢性腎不全が引き起こすことが強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、老齢マウスにおける一細胞RNAseq解析が完了している。また、今後の老化研究の鍵になるツールとなるSASP抑制マウスの樹立に成功し、慢性腎不全におけるSASPの重要性を示すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
一細胞RNAseq解析に関しては、今回行った自然加齢マウスに加えて、老化細胞が関与する代表的な加齢関連疾患や組織損傷モデル等の解析を行っていく予定である。また、新たに樹立したSASP抑制マウスを用いて、慢性腎不全以外の疾患や個体老化に対する検討も行う必要がある。
|