研究課題/領域番号 |
19H03432
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤井 雅寛 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30183099)
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研究分担者 |
長谷川 成人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 分野長 (10251232)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / ドーパミン / 活性酸素 / NRF2 / p62 / USP10 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は、ドーパミン作動性神経細胞の細胞死を特徴とする神経変性疾患である。本研究では、USP10がドーパミンによる神経細胞株のアポトーシスをNrf2/Keap1/p62経路を介して抑制することを見いだした。SH-SY5Y細胞はドーパミン応答性の神経細胞株である。USP10のsiRNAを用いて、SH-SY5YにおけるUSP10の発現をノックダウン(USP10-KD)し、さらに、ドーパミンで処理した。ドーパミンはUSP10-KD細胞にアポトーシスを誘導し、このアポトーシスは野生型よりも昂進していた。このアポトーシスには、活性酸素の産生が関与し、このアポトーシスは抗酸化剤(NAC)の処理によって抑制された。 Nrf2は、様々な抗酸化遺伝子の発現を誘導する転写活性化因子である。Nrf2活性は、Keap1とp62によってそれぞれ負と正に制御されている。USP10-KD細胞をドーパミンで処理し、Nrf2とp62の発現量を検討した。野生型細胞では、ドーパミン処理後に、Nrf2とp62の蛋白量が増加したが、この増加は、USP10-KD細胞では観察されなかった。さらに、USP10-KD細胞では、リン酸化したp62(pp62/Ser349)量が、ドーパミン処理前から低下していた。従って、USP10は, pp62/Ser349量を制御することによってNrf2活性を制御することが示唆された。 USP10-KDと同様に、ドーパミンによるSH-SY5Yの細胞死は、p62とNrf2のノックダウンでも増加した。一方で、ドーパミン処理によるUSP10-KD細胞の細胞死はKeap-1-KDによって減少した。これらの結果は、USP10がNrf2/Keap1/p62経路を介して、細胞死を抑制することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病においてUSP10が神経細胞の細胞死を抑制していることを発見し、学会発表し、論文を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
1)USP10、G3BP1、G3BP2複合体がアグリソーム形成を制御する分子機構を明らかにする。USP10とαシヌクレインの発現プラスミドを細胞に共発現するとαシヌクレイン陽性のアグリソームが形成される。この形成に対する、G3BP1あるいはG3BP2のノックダウンの効果を調べる。2)神経細胞株(SH-SY5Y)において、USP10、G3BP1、G3BP2をノックダウンし、αシヌクレインの蛋白質分解とアグリソーム形成に対する、USP10、G3BP1、G3BP2の作用を検討する。3)USP10をノックダウンすると細胞死が誘導される。この系を用いて、病原性オリゴマーを検出し、病原性オリゴマーと細胞毒性の分子機構を明らかにする。 4)USP10, G3BP1、G3BP2欠損マウスを用いて、生体内の凝集体形成におけるアグリソームの役割を明らかにする。5)神経変性疾患患者における、病原性凝集体とUSP10、G3BP1、G3BP2の局在と発現との関係を明らかにする。 6)タウ遺伝子のP301S変異は、Frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17(FTDP-17)の原因遺伝子の一つである。USP10はタウの凝集体形成を誘導する。P301S 変異タウ遺伝子を導入したモデルマウスはFTDP様の神経変性疾患を発症する。このマウスをUSP10ヘテロKOマウスと交配し、FTDP発症におけるUSP10の役割を調べる。同様の解析をG3BP1ヘテロKOマウスおよびG3BP2ヘテロKOマウスを用いて行う。
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