本年度は最終目標である「血球貪食能の発現を制御する細胞内のkey regulator」を理研のOleg Gusev博士とともにCAGE法を用いることで解明することを目指した。三種刺激の解析は複雑であり、CpG DNA+IFN-g刺激によっても中等度の血球貪食を誘導することが可能であることから、骨髄由来マクロファージ(BMDM)を用いてIFN-g単独、CpG DNA単独、CpG DNA+IFN-g刺激を与え、3時間、9時間、15時間後に発現している遺伝子群をCAGE法にて網羅的に解析した。CAGE法では、転写エンハンサーのアノテーションや活性を調べることが可能であることから、BMDMのプロモータープロフィールに加えて、CAGEデータを用いて双方向転写エンハンサーのアノテーションを行った。その結果、CpG DNA+IFN-g刺激では、他のグループと明らかに異なる特異的な発現プロファイルを示すことが判明した。さらに、CpG DNAによる処理では、活性化の終末状態に達するまでに少なくとも9時間を要するのに対し、IFN-gによる処理ではわずか3時間であることが判明した。特に、KLF6、THBS1などの免疫関連遺伝子のエンハンサーは、CpG DNA+IFN-g刺激で劇的に変化した。さらに、CAGE法の利点として、TSSを容易に同定することが可能であることから、マクロファージの各種刺激において異なるTSSを利用する遺伝子を探索した。その結果、CpG DNAとIFN-gの相乗効果により、CpG DNAやIFN-g単独と比較して、7つの特定遺伝子のTSSに変化が生じることが判明した。これらの遺伝子は、マクロファージ極性や免疫応答に関与する遺伝子である為、血球貪食能の制御に関与するかをCRISPR/Cas9で欠損させることにより現在検討中である。
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