研究課題
新生仔マウスに抗PDGFRβ抗体を投与して網膜血管のペリサイトを消失させると、網膜表層の血管壁周囲に浸潤した単核食細胞が、徐々に網膜深層に移動する。さらに血管透過性亢進に伴う漿液性網膜剥離が発症した後は、単核食細胞が網膜下に蓄積し、筋線維芽細胞と緊密に接する。こうした知見から、ペリサイト消失網膜では単核食細胞が線維化を誘導すると考えられたが、内在性ミクログリアと骨髄由来炎症細胞の特異的役割については不明であった。そこで我々は、CX3CR1-CreERT2:R26R-EYFPレポーターマウスの網膜ペリサイトを消失させた上で、眼内および腹腔内にタモキシフェンを投与し、ミクログリアと骨髄由来炎症細胞の網膜内局在を解析した。その結果、急性炎症期ではミクログリアおよび骨髄細胞の双方に由来するマクロファージが網膜に浸潤するが、慢性炎症期への移行と線維化の進行に伴って、骨髄由来マクロファージが減少し、ミクログリアが残存することが明らかとなった。これらの結果から、ペリサイト消失網膜では主にミクログリアが線維化を誘導すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り順調に進展している
ミクログリアの線維化誘導能を実証するため、ペリサイト消失網膜症モデルマウスの眼内に抗CSF1R抗体を投与してミクログリアを消失させた上で、線維化の変化を解析する。さらにFACS解析と免疫組織化学染色法を組み合わせることによって、線維化を誘導するミクログリア亜集団を同定する。また、単細胞RNAseq解析を用いて線維化誘導ミクログリアが発現するシグナル分子を探索する。最終的に、ミクログリア由来シグナルの機能を阻害する抗体製剤や低分子化合物をペリサイト消失網膜症モデルマウスに投与することによって、新規抗線維化薬の開発に展開する。
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