研究実績の概要 |
疾患の細胞表面に特異的に発現するタンパク質を標的とするペプチドを同定し、標的細胞の細胞膜を超えて薬剤が取り込まれることにより、薬理効果を発揮する新規薬剤の開発を目指して研究を進めている (Sugihara K. et al. Nature Commun. 2014 , Proc Natl Acad Sci USA.2007, 2009, 2011.)。 これまでに、CNGB3(Cyclic Nucleotide Gated Channel Subunit Beta 3)が、子宮内膜症ならびに悪性腫瘍に選択的に発現し、細胞へ選択的にデリバリーするための標的分子となり得ることを見出している。しかしながら、CNGB3は、6回膜貫通型のチャネルであり、一般的に、このような膜タンパク質を機能阻害する(native構造を認識する)抗体の作成は容易ではなく、実際、CNGB3に対する機能阻害する抗体は販売されていない。しかし、新規薬剤開発の観点から CNGB3に結合しインターナリゼーションするDDS型の分子の探索は特に有益なため、機能的に作用するDDS型ヒト抗体の作製を目指た。 昨年度までの研究で、CNGB3の発現細胞を免疫し、機能抗体を得るためフローサイトメータによる抗体(抗血清)のスクリーニングを実施したが、目的の抗体は得られなかった。原因として、抗原に用いた発現細胞のCNGB3発現量が高くないためと考えられた。そこで、発現細胞の細胞種の変更ならびにベクターの再構築を行い、新規の発現細胞を用いて抗体の作成を進めた。 今年度は、新たに細胞を再作成などを実施したため時間を要したが、新規の抗血清作成を行いクローンのスクリーニングまで実施した。得られたクローンを用いてハイブリドーマ作製、単クローン化、ヒト抗体作製の可能性が開けたため、本研究により将来の大きな可能性に繋がる成果を得ることができた。
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