研究課題/領域番号 |
19H03439
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中邨 智之 関西医科大学, 医学部, 教授 (20362527)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
我々の生体組織の伸縮性は、弾性線維という細胞外マトリックスが担っている。弾性線維の分解・劣化が肺気腫、動脈中膜硬化などの老化関連疾患や皮膚のたるみなどの直接原因であるため、弾性線維の形成・維持の機構解明は高齢化社会における極めて重要な課題である。しかし弾性線維のターンオーバーは極めて遅く、その再生は困難とされている。これまで報告者は弾性線維形成に必要なプロセスを研究し、それぞれのプロセスに必須のタンパク質を同定してきた。本研究では、それらの生体内での機能と動態を明らかにするとともに、弾性線維の維持機構、弾性線維再生がおこる条件等を解明する。 1)マトリセルラータンパク質Fibulin-4によるマトリックス架橋酵素リシルオキシダーゼ(LOX)の活性化機構の解明 LOXはコラーゲンおよびエラスチンを架橋する酵素であり、膠原線維と弾性線維の形成に必須である。LOX遺伝子欠損マウスとFibulin-4遺伝子欠損マウスの表現型が同じであることからFibulin-4とLOXの関わりが想定されていたが、これまでその機構は謎であった。今回、LOXがゴルジ体において銅イオンを取り込むためにFibulin-4が必須の役割を果たすことを明らかにした。さらに、細胞外に分泌されたFibulin-4を取り込んでゴルジ体まで逆輸送する経路があることも見出した。 2)循環する弾性線維形成タンパク質の弾性線維形成・維持における役割の解明 弾性線維形成がおこるのは成長期までとされているが、報告者は成体・成人の組織にもFibulin-5が多く発現し、血中に高濃度のFibulin-5が循環していることを見出した。これまでに他の弾性線維形成因子の測定系を確立し、ヒト血清サンプルを収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リシルオキシダーゼ(LOX)はコラーゲンやエラスチンといった「建築資材」どうしを共有結合で架橋する酵素であり、細胞外マトリックス構築の鍵となる分子である。分泌タンパク質Fibulin-4の機能がLOX活性化であること、しかもその働きの場がゴルジ体であることは意外性のある重要な発見である。この内容はScience Advances誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
一旦分泌されたタンパク質がエンドサイトーシスで取り込まれてゴルジ体まで逆輸送され、酵素を活性化するという例は他にない。Fibulin-4受容体の同定をはじめ、この経路の解明を今後行っていく。また、平滑筋特異的Fbln4コンディショナルノックアウトマウスは上行大動脈瘤を来し、ACE阻害薬やARBによって大動脈瘤の形成が抑止できることが発表されている。そのメカニズムは未だ不明であるが、LOXの機能不全が上行大動脈瘤に関わっているのかどうかを明らかにするため、平滑筋特異的Loxコンディショナルノックアウトマウスを作成して解析する予定である。
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