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2020 年度 実績報告書

αGlcNAcによる胃分化型癌の制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 19H03441
研究機関信州大学

研究代表者

中山 淳  信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10221459)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード糖鎖 / 胃発癌 / 炎症 / 遺伝子改変マウス
研究実績の概要

本研究の目的はαGlcNAcが消失したA4gntノックアウト(KO)マウスに自然発生する胃分化型癌に関してIL11とMUC1に着目し、αGlcNAcによる発癌の分子機構を解明することである。
本年度は5-50週齢におけるA4gnt KOマウスの胃粘膜をイムノブロット法により定量解析し、IL11下流の癌関連シグナル分子であるSTAT3の活性化(リン酸化STAT3)が野生型マウスに比べて5-10週齢で有意に亢進していることを見出した。またgp130の発現についても同様に解析し、A4gnt KOマウスで野生型マウスに比較し、5週齢で有意な発現亢進が認められた。この結果は5-10週齢でのSTAT3活性化の亢進と関連していると考えられる。一方、免疫組織化学的解析によりA4gnt KOマウスの胃粘膜におけるリン酸化STAT3の発現は、5週齢で既に幽門腺細胞とその周囲間質の単核球に認められ、その発現の程度は野生型マウスと比較し亢進していた。さらに、IL11/IL11Ra/gp130/JAK2/STAT3経路とαGlcNAcの関係について検討し、αGlcNAcが結合し得る候補分子としてIL11Raとgp130とを同定した。
一方、我々は以前にマウスMUC1のN末端ドメインにαGlcNAcが結合していること、並びにA4gnt KOマウスの胃幽門粘膜ではMUC1の発現が加齢とともに腺管下層から上層に拡大することを示した。しかし、A4gnt KOマウスの胃粘膜において、MUC1のC末端ドメインのリン酸化が確認されなかったことから、A4gnt KOマウスの胃発癌においてMUC1を介する癌関連シグナル分子が積極的に関与している可能性を示唆する知見は得られなかった。
以上の結果より、A4gnt KOマウスにおける胃発癌過程の初期段階では、STAT3の活性化が重要な役割を演じていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究成果により、5-10週齢のA4gnt KOマウスの胃粘膜では野生型マウスと比較し、リン酸化STAT3が有意に高発現しており、IL11/IL11R/gp130/JAK2/STAT3経路の活性化が発癌の起点となっていることが示唆された。
さらに、この経路とαGlcNAcの関係について、αGlcNAc結合蛋白質を含む糖蛋白質画分を調製して解析を進め、候補分子としてIL11Raとgp130を同定したことによる。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果により、5-10週齢のA4gnt KOマウスでは野生型マウスと比較し、胃粘膜でSTAT3が有意に活性化していることが示された。この事実はSTAT3の活性化が発癌過程の初期に重要な役割を担っていることを示唆している。
IL11/IL11Ra/gp130/JAK/STAT3シグナル経路に係わる分子の中で、αGlcNAc が結合し得る候補としてIL11Raとgp130を同定したので、次年度はその確定のための解析を行う。もし、A4gnt KOマウスの胃粘膜において上述のシグナル経路が機能しているとすれば、IL11Raとgp130が相互作用していると考えられるので、この点について野生型マウスと比較して検証する。さらに、リン酸化STAT3とIL11RaがA4gnt KOマウスの胃粘膜において同一の幽門腺細胞に発現しているか否かを検討する。
次に、A4gnt KOマウスの胃粘膜では、幽門腺細胞以外に単核球にもリン酸化STAT3が発現していることが示された。しかし単核球にはIL11Raが発現していなかったことから、単核球におけるSTAT3の活性化にIL11以外の関与が示唆される。IL6の関与も想定し、A4gnt KOマウス、A4gnt/IL11 ダブルKOマウス、A4gnt/IL11/IL6 トリプルKOマウスの胃粘膜を対象に、間質の単核球におけるリン酸化STAT3の発現を免疫組織化学的に検討する。
最後に、ヒトの早期分化型胃癌のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから作製した組織切片を対象に、αGlcNAcに対する免疫染色を行い、早期胃癌をαGlcNAc陽性群とαGlcNAc陰性群に大別する。次いで、リン酸化STAT3に加え、IL11R、gp130、リン酸化JAK2等に対する免疫染色を行い、これら分子の発現をαGlcNAc陽性群とαGlcNAc陰性群とで比較検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Cholestenone functions as an antibiotic against Helicobacter pylori by inhibiting biosynthesis of the cell wall component CGL.2021

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi J, Kawakubo M, Fujii C, Arisaka N, Miyashita M, Sato Y, Komura H, Matoba H, Nakayama J
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 118 ページ: e2016469118

    • DOI

      10.1073/pnas.2016469118

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Diffuse MIST1 expression and decreased α1,4-linked N-acetylglucosamine (αGlcNAc) glycosylation on MUC6 are distinct hallmarks for gastric neoplasms showing oxyntic gland differentiation.2020

    • 著者名/発表者名
      Yamada S, Yamanoi K, Sato Y, Nakayama J
    • 雑誌名

      Histopathology

      巻: 77 ページ: 413-422

    • DOI

      10.1111/his.14165

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Decreased alpha-1,4-linked N-acetylglucosamine glycosylation in biliary tract cancer progression from biliary intraepithelial neoplasia to invasive adenocarcinoma.2020

    • 著者名/発表者名
      Okumura M, Yamanoi K, Uehara T, Nakayama J
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 111 ページ: 4629-4635

    • DOI

      10.1111/cas.14677

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 信州大学医学部医学科・大学院総合医理工学研究科医学系専攻医学分野 分子病理学教室

    • URL

      http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-2byori/index.html

  • [備考] Cholestenone shows antibiotic properties against

    • URL

      https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-04/su-csa042721.php

  • [産業財産権] 抗ピロリ菌活性を有するコレステロール類似物質2021

    • 発明者名
      中山 淳、川久保雅友
    • 権利者名
      国立大学法人信州大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2021/3143
    • 外国

URL: 

公開日: 2021-12-27   更新日: 2023-03-16  

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