研究課題
IL11受容体(IL11R)におけるαGlcNAc 修飾の有無を検証するため、10週齢の野生型(WT)並びにA4gnt欠損(KO)マウスの胃粘膜溶解液中のGSA2結合画分を対象に、抗αGlcNAc抗体を用いたイムノブロットを行った。αGlcNAcはWTマウスにのみ検出され、このバンドは抗IL11R抗体と反応したことから、αGlcNAc はIL11Rに結合していることが示された。この結果はWTマウスにおいてIL11Rと、gp130やIL11との会合が立体阻害を受けている可能性を示している。次にA4gnt KOマウスにおけるSTAT3のリン酸化(pSTAT3)がIL11依存性か否かを検討するため、10週齢のA4gnt KOマウスとA4gnt/Il11ダブル欠損(DKO)マウスの胃粘膜組織切片を抗pSTAT3抗体で免疫染色した。pSTAT3は胃の幽門腺細胞と間質の単核球に発現しており、その程度はA4gnt KOマウスと比較しA4gnt/Il11 DKOマウスで減弱したが完全には陰性化しなかった。また、A4gnt/Il11 DKOマウスの胃粘膜病変はA4gnt KOマウスと比較して有意に厚さが減じ、異型度も減弱したが、病変は残存した。このことからSTAT3活性化の主な要因はIL11であるが、L11を介さない活性化経路の存在も示唆された。最後に37例のヒト分化型早期胃癌の組織切片に対してαGlcNAcとpSTAT3の免疫染色を行った。αGlcNAcは35.1%に陽性、pSTAT3は81.0 %に陽性であり、A4gnt KOマウスの表現型を示すαGlcNAc 陰性かつpSTAT3陽性例は8%に認められた。しかし、αGlcNAc陰性とpSTAT3陽性との間に統計学的有意差は得られなかった。以上より、αGlcNAcによる分化型胃癌制御機構の一つとして、STAT3の活性化抑制が示された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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