研究課題
本年度は、消化管癌の薬剤耐性の克服・癌幹細胞の制圧を目的とし、以下のとおり研究を実施した。1)薬剤耐性癌幹細胞オルガノイドの網羅的遺伝子発現解析における特異的遺伝子の同定と機能解析:5-U耐性胃癌において薬剤耐性・腫瘍形成能・転移能に関与するKHDRBS3について、大腸癌を用いて検討した。KHDRBS3はKRAS変異細胞株及びオルガノイドにおいて発現が亢進していた。KHDRBS3はCD44vの発現を惹起して5-FU耐性に関与し、免疫不全マウスモデルにおいてはWNT標的遺伝子のAXIN2、MYC、LGR5を介して腫瘍形成能と転移能を制御することが示された。L-OHP(オキサリプラチン)耐性胃癌オルガノイドについての解析では、(myoferin)に注目して解析を進めた。MYOFはL-OHP耐性細胞株のみで発現が亢進しており、MYOFのノックダウン及び阻害剤WJ460処理により、L-OHP耐性、細胞浸潤、細胞運動、腫瘍形成能が有意に抑制された。さらに、同じ処理によりスフェロイド及びオルガノイド形成能が有意に抑制され、薬剤耐性と共に癌幹細胞性を制御するものと考えられた。L-OHP耐性胃癌オルガノイドで発現亢進しているPeptidase Inhibitor 3についても検討を開始した。2)同定した薬剤耐性癌幹細胞特異的分子・遺伝子異常の診断マーカーとしての有用性:免疫染色による臨床検体を用いた解析で、KHDRBS3陽性は大腸癌における独立した予後不良因子であることが示された。さらに、5-FU無治療例ではKHDRBS3の発現は予後に影響を及ぼさず、5-FU治療例のみで予後不良因子であることが分かった。一方、MYOF陽性は、胃癌の深達度、リンパ節転移、リンパ管内侵襲及び不良な予後と相関し、多変量解析において独立した予後因子となった。特に術後プラチナ製剤治療例において顕著であった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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