研究課題
手術により切除された肺上皮内腺癌8病変を対象とし、ホルマリン固定パラフィン包埋された組織を用いた。20ミクロンに薄切された組織からDNAを抽出し、NEBNext FFPE DNA Repair Mixで修復し、NEBNext dsDNA Fragmentaseを用いて断片化した後、NEBNext Ultra II DNA Library Prep Kitを用いて、次世代シークエンスにむけたライブラリ調整を行った。プローブは、xGen Exome Research Panel v2を用いて、全エクソン領域をキャプチャーするようにした。対象とした6症例8病変およびそれぞれの症例の非腫瘍部でのシーケンス深度を調べた。各試料の平均深度(Average depth)は計23回のシーケンスのうち20回で50を超えていた。また、腫瘍部と非腫瘍部を比較参照し、一定の基準を満たす体細胞塩基置換(somatic SNV)や体細胞挿入/欠失(somatic IN/DEL)を抽出し、腫瘍部での変異アレル頻度を算出した。その結果、0.1程度の変異アレル頻度を示す遺伝子変異が多いことが明らかとなった。一方、一部症例ではKRAS(G12C)やERBB2(D277Y)、RBP10(Q342X)など、変異アレル頻度0.25程度の遺伝子変異も検出された。これらの結果は、肺腺癌の早期病変においても、腫瘍内のゲノム変異にheterogeneityがあることを示唆している。
3: やや遅れている
コロナ禍のため、グループのミーティングができなかったこと、ゲノム解析は海外へ発注したが、検体の送付・受取に時間を要したこと、生データ到着の後、web上のミーティングのため、解析に時間を要したこと、共同研究者のなかに入院者が出たことなどが、主たる遅れの原因である。
当初の計画では、肺腺癌の早期病変の解析のみならず、肺の病理学で長らく懸案となっているtumorletとcarcinoidとの関係、硬化性肺胞上皮種のゲノム解析も研究課題に挙げた。しかしながら、正常組織中のゲノム解析が急速に進展しており、正常組織からのずれが少ない早期病変に注目が集まりつつある。そこで、まずは、肺腺癌の早期病変に集中し、期間内に有意な結果を得るべく、全力を挙げる。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 2件)
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