研究課題/領域番号 |
19H03454
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川端 剛 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (60734580)
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研究分担者 |
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
海野 怜 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (40755683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / 複製ストレス / ゲノム安定性の維持 / がん |
研究実績の概要 |
細胞内バルク分解系であるオートファジーが発がんを抑制する役割が多くのモデル実験系により示されているが、そのメカニズムは未だ解明されていない。申請者らは、発がんの過程における大規模なゲノム再編の主要因として注目されるDNA複製ストレスの関与を想定し、これまでにオートファジーの異常が複製ストレスに起因するゲノム不安定性を増悪させる事を明らかとしている。さらに、オートファジーの異常は複数のがん抑制遺伝子をコードする特定のゲノム領域を不安定化し、それら遺伝子の発現低下を引き起こす、すなわちオートファジー依存型がん抑制遺伝子とも言うべき存在が想定された。本研究ではこれをオートファジーの異常と発がんを結ぶ突破口と目し、以下の3つの研究を主軸とした研究を行なっている。 1)オートファジーがゲノム不安定性を防ぐ分子メカニズムの解明 2)詳細なゲノムワイド解析によるオートファジー依存型がん抑制遺伝子の全貌の解明 3)生活習慣病をモデルとしたオートファジー依存型がん抑制遺伝子の機能低下の検証 当該年度は計画の初年度にあたり、計画の基礎となる複数のゲノムワイド解析を進めた。また、分子メカニズムの解明に当たって鍵となるイベントを検出する実験を行なった。これより次年度以降に行う研究の指針が示された。特に、オートファジーの異常が特定のがん遺伝子の発現に影響を与える事を示す実験結果が得られた。これらの異常がオートファジー依存型がん抑制遺伝子の機能低下と共に発がんを引き起こすと想定され、オートファジーが発がんを抑制するメカニズムの解明に大きな進展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の各項目について、下記の通り研究を実施して結果が得られている。 1)オートファジーがゲノム不安定性を防ぐ分子メカニズムの解明:オートファジー欠損細胞(ATG7 -/- 及びATG16 -/- HEK293T細胞)において複製フォークの進行をDNAファイバー法により直接的に測定すると共に、フローサイトメトリーを用いた実験を行ったところ、オートファジーが停止した複製フォークのリカバリーに関与する結果が得られた。続いて、DNAファイバーで直接的に複製フォークのリカバリーを検証する実験を実施する予定である。 2)詳細なゲノムワイド解析によるオートファジー依存型がん抑制遺伝子の全貌の解明:トランスクリプトームの解析に加え、詳細なarray CGH解析の実験結果が得られ、これより複数の未同定のオートファジー依存型がん抑制遺伝子の候補が得られると共に、オートファジーの異常が特定のがん遺伝子の発現に影響を与える事を示す実験結果が得られた。 3)生活習慣病をモデルとしたオートファジー依存型がん抑制遺伝子の機能低下の検証:1)および2)の計画で得られた結果のin vivoにおける検証を行うべく、尿路結石モデルを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
1)オートファジーがゲノム不安定性を防ぐ分子メカニズムの解明:オートファジー欠損細胞において、DNAファイバー法による複製フォークのリカバリー検証実験を行い、分子メカニズムを検証する。さらに、停止した複製フォークを安定化する複数の経路を各々もしくは複合的に活性化し、異常が軽減されるか検討する。
2)詳細なゲノムワイド解析によるオートファジー依存型がん抑制遺伝子の全貌の解明:前年度までに得られた結果を踏まえ、エクソーム解析によりオートファジー依存型がん抑制遺伝子のみならず、オートファジーに関連するがん遺伝子の同定と、それらの発現の変化が起きるメカニズムの解明を進める。さらに、Chromatin IP実験によりエクソーム解析ではカバーしきれない領域で起きる複製フォークの異常を検討する。
3)生活習慣病をモデルとしたオートファジー依存型がん抑制遺伝子の機能低下の検証:これまでに作成した尿路結石モデルを用いて、仮説のin vivoにおける検証を進める。
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