研究課題
マラリア原虫の赤血球侵入は宿主体内では必須のステップである。赤血球侵入期のシグナル伝達経路の全体像を理解することで、分子機能の深い理解に立脚した新たなワクチン構想や創薬が可能となる。本研究では、赤血球侵入期に発現する種々の分子を誘導的に遺伝子座破壊もしくは転写抑制し、寄生赤血球からの原虫放出~赤血球侵入の種々のステップ、原虫分子の表面分泌、細胞内カルシウム濃度の上昇、蛋白質リン酸化等に対して、各種分子を除いた際の影響を検討することで、マラリア原虫の赤血球侵入に当たり、細胞内分泌小器官から分泌される種々のワクチン候補抗原の分泌トリガーとそれらをつなぐシグナル伝達に関わる分子を明らかにすることを目的とした。令和元年度は、ノックアウトにより赤血球侵入期増殖速度が低下し、雌性生殖体の赤血球への接着が著減する偽リン酸化酵素pPK1をより詳細に解析した結果を学術誌にて論文発表した。また、ノックアウトによりマイクロネーム分子であるAMA1の局在が変化したジアシルグリセロールキナーゼDGK1のより詳細な解析を行うため、マラリア原虫が有するもう一つのジアシルグリセロールキナーゼDGK3とともに条件下ノックアウト原虫および条件下ダブルノックアウト原虫を作出した。EBLが関与するシグナル・ネットワークを明らかにするため、EBLと相補的に働く原虫分子の同定を遺伝学的手法で試みたが、明らかな候補遺伝子座は見出されなかった。
2: おおむね順調に進展している
既に作出済みの複数のリン酸化酵素ノックアウト原虫について種々の表現型解析が進み、一つについては学術誌に論文発表した。また、複数の遺伝子について条件下ノックアウトに成功し、表現型解析も行うことができた。
初年度で作製できなかったコンディショナル・ノックダウン/アウト原虫を作製する。初年度に作製した遺伝子組換え原虫について、増殖率、赤血球からの放出から赤血球侵入の間で各分子が関与するステップ、各種細胞内小器官からの分子分泌等への影響を明らかにする。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
Parasitology International
巻: 76 ページ: 102056
10.1016/j.parint.2020.102056
mBio
巻: 11 ページ: e02995-19
10.1128/mBio.02995-19
巻: 10 ページ: e01170-19
10.1128/mBio.01170-19
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/protozoology/