マラリア原虫の赤血球侵入は宿主体内では必須のステップである。赤血球侵入期のシグナル伝達経路の全体像を理解することで、分子機能の深い理解に立脚した新たなワクチン構想や創薬が可能となる。本研究では、赤血球侵入期に発現する種々の分子を誘導的に遺伝子座破壊もしくは転写抑制し、寄生赤血球からの原虫放出~赤血球侵入の種々のステップ、原虫分子の表面分泌、細胞内カルシウム濃度の上昇、蛋白質リン酸化等に対して、各種分子を除いた際の影響を検討することで、マラリア原虫の赤血球侵入に当たり、細胞内分泌小器官から分泌される種々のワクチン候補抗原の分泌トリガーとそれらをつなぐシグナル伝達に関わる分子を明らかにすることを目的とした。 令和3年度は、偽リン酸化酵素pPK1と構造と転写パターンが似ている2つの偽リン酸化酵素のノックアウト原虫の解析を行い、一つは、すでに発表済みの偽キナーゼpPK1と似た表現型を示す事を見出した。ジアシルグリセロールキナーゼDGK1とDGK3の条件下ダブルノックアウト原虫の赤血球侵入のステップへの影響を検討するため、タイムラプスイメージング解析を行った。DGKにより作られるフォスファチジン酸が結合するAPHについて条件下ノックアウト原虫を作製し、赤血球期増殖、赤血球侵入能力、細胞小器官の局在、分子分泌能力、赤血球侵入のステップへの影響を検討した。また、赤血球侵入過程のメロゾイトの動態を観察する過程で、世界で初めて見出したメロゾイトの滑走運動について報告した。
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