研究課題/領域番号 |
19H03464
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮腰 昌利 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (60755809)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 転写後調節 / small RNA / 3´UTR / サルモネラ / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
セントラルドグマにおいて単にタンパク質の鋳型と考えられてきたmRNAは、転写後レベルの制御を受けるだけでなく、他のmRNAを制御することが明かされつつある。腸内細菌科細菌で見出されたmRNAの3´UTRから生成するsmall RNA (sRNA) は、従来型のsRNAと同様に遺伝子発現を調節する機能を持つ新しいタイプの制御因子である。mRNAの3´UTRから派生するsRNAは少なくとも大腸菌やサルモネラにおいて30種類以上存在するが、未だ数例しかその機能は実証されていない。本研究ではmRNAの3’UTRから派生するsRNAの機能を体系的に解析し、原核生物mRNAの3´UTRを介した制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。さらに、3´UTRにおける変異の蓄積によってRNA制御ネットワークがどのように腸内細菌科の中で進化してきたのかを実験的に解明する。 現在解析を進めているグルタミン合成酵素遺伝子glnAはサルモネラの病原性発現に重要であることが知られている。今年度、サルモネラのglnA mRNAの3’UTRはRNase Eによって2種類のsRNA GlnZ1とGlnZ2をプロセシングし、同様に大腸菌K12株のglnA mRNAは単一のsRNA GlnZをプロセシングすることが明らかになった。サルモネラGlnZ1および大腸菌GlnZの標的遺伝子をサルモネラおよび大腸菌におけるRNA-seq解析の結果を利用して探索した。GFP翻訳融合体の蛍光強度を蛍光マイクロプレートリーダーを用いて定量解析し、標的遺伝子が実際に転写後調節を受けるか実験的に検証を行った。さらに、大腸菌のglnA 3´UTRは長さが異なる3つのタイプ(K12株、O111株、O157株)に分類されるが、共通する標的遺伝子を制御することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、サルモネラおよび大腸菌のglnA mRNAが3´UTRにおいてRNase Eによるプロセシングを受け、それぞれGlnZ1/GlnZ2およびGlnZ sRNAを生成することを示した。サルモネラGlnZ1および大腸菌GlnZの標的遺伝子を同定し、実際に標的遺伝子との塩基対形成によって転写後調節が行われていることを実証した。また、サルモネラGlnZ1に共通して見られる1塩基挿入によって特定の標的遺伝子の制御が阻害されていることが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
サルモネラGlnZ1および大腸菌GlnZが生理学的な条件で標的遺伝子の翻訳を制御することをウェスタンブロット解析で明らかにする。さらに、glnA mRNAの3´UTRの違いが表現型の変化をもたらす生理学的条件を探索する。ここまでの研究成果を論文発表するとともに、引き続き細菌の代謝や病原性に重要な他のmRNAの3´UTRから派生するsRNAの機能を体系的に解析する。
|