研究課題
SA1292遺伝子は、黄色ブドウ球菌のカイコに対する病原性に寄与するヌクレオチドピロフォスファターゼをコードする。本年度までに、SA1292遺伝子が黄色ブドウ球菌の溶血毒素遺伝子の発現に寄与すること、ならびに、SA1292遺伝子産物がGTP、TTP、UTPの分解活性を示すことを明らかにしている。本年度は、SA1292遺伝子産物のヌクレオチドピロフォスファターゼ活性が病原性に関わる分子メカニズムの解明を試みた。SA1292遺伝子産物と相同性を有するヌクレオチドピロフォスファターゼMazGが酸化型ヌクレオチドの分解に働くという知見に基づき、SA1292によるヌクレオチドピロフォスファターゼ分解活性が、酸化型ヌクレオチドに対して強いか検討した。酸化型ヌクレオチドである8-oxo-GTP に対するSA1292の分解活性は、GTPとdGTPに対する分解活性に比べて高い値を示した。次に、SA1292遺伝子欠損株が酸化ストレス条件における生存に必要であるか検討を行った。SA1292遺伝子欠損株は、過酸化水素存在下で野生株に比べて増殖速度が低下することが判明した。以上の結果は、SA1292遺伝子産物が酸化型ヌクレオチドを分解し、酸化ストレス条件における黄色ブドウ球菌の増殖に寄与することを示唆している。これまでに代表者が黄色ブドウ球菌の様々な遺伝子欠損株について解析を行った結果、黄色ブドウ球菌の酸化ストレスに対する耐性はカイコ殺傷活性に必要であることを見出している。したがって、SA1292遺伝子産物による酸化ストレス耐性の付与はカイコ感染時に重要な役割を持つと推定される。
2: おおむね順調に進展している
1) SA1292遺伝子産物がGTPと比較して、8-oxo-GTPに対して高い分解活性を示すことを見出した。2) SA1292遺伝子欠損株が酸化ストレスに感受性を示すことを見出した。以上の研究成果から、本研究がおおむね順調に進展していると判断する。
1) グラム陽性細菌の病原性発現に働く核酸相互作用因子の探索と機能解析2) 黄色ブドウ球菌以外のグラム陽性細菌における核酸相互作用因子の機能の解明
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