研究課題
ヒトを含むほぼ全ての多細胞生物は、酸素を失えば生命を維持できない。その一方で生体内の酸素分圧は末梢に向かって低下し、さらに生理的環境要因(歯肉溝や大腸管腔など)や疾患(感染症やがんなど)によって定常的にあるいは一過性の低酸素状態(hypoxic condition, hypoxia)になっている。細菌の中には低酸素環境でのみ増殖できる菌(嫌気性菌や微好気性菌)がいるが、こういった細菌の感染を調べる実験系には低酸素環境が考慮されていなかった。つまり、感染部位の環境を反映しておらず、本来の菌の感染と宿主応答の様態をみていない可能性が高い。そこで本研究では嫌気性および微好気性菌に焦点を絞り、新たに見出された低酸素環境における細菌感染と宿主の応答機構を解明する。2019年度は、いくつかの嫌気性細菌と微好気性細菌を免疫細胞等に感染させる系を立ち上げ、マルチガスインキュベーターを用いて各種酸素濃度における宿主の炎症応答を調べてみた。その結果、低酸素状態になると宿主炎症が増強される場合と逆に抑制される現象が各菌種の感染後にみられることがわかった。当初菌の増殖速度が酸素濃度によって影響を受けることが予想され、それが宿主炎症へ関連すると推定されたが、さらに解析した結果、菌の増殖速度で全てを説明できないことがわかった。これらの結果から、酸素濃度が細菌の増殖よりむしろ病原因子の発現や宿主細胞側の機能に影響を与えることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
実験系の立ち上げはスムーズに進み、解析結果が順調に出ている。
酸素濃度に影響する炎症に関連する宿主因子が推定されてきたため、今後は当該因子の遺伝子欠損マウスの作成あるいは導入を図ることによって、より分子レベルでの解析を進める。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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