ヒトを含むほぼ全ての多細胞生物は、酸素を失えば生命を維持できない。その一方で生体内の酸素分圧は末梢に向かって低下し、さらに生理的環境要因や疾患によっても低酸素状態になっている。細菌の中には低酸素環境でのみ増殖できる菌がいるが、こういった細菌の低酸素環境での感染を調べる実験系に酸素濃度が考慮されていなかった。そこで本研究では、低酸素環境における細菌感染と宿主の応答機構について検討した。その結果、低酸素環境下ではこれまで報告と異なる宿主炎症応答が生じることが判明し、この原因として細胞の貪食機能や低酸素応答が関与していた。本研究により、感染部位の環境を反映した本来の菌の感染と宿主応答の姿を見出した。
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