研究実績の概要 |
本年度はTn-Seqスクリーニングにより得られた、同一のシグナル伝達経路に関わると考えられる2つの候補遺伝子(仮にxとyとする)について解析を行った。まずはx, y遺伝子の欠損株を作成し、マウス骨髄由来マクロファージに感染させ細胞内増殖を検討したところ、Tn-Seqスクリーニング結果から予想された通り、x, y両遺伝子の欠失株とも細胞内増殖能が顕著に減弱していた。一方で液体培地中での増殖には差は認められなかった。顕微鏡下での観察による、感染7時間後のレジオネラ含有液胞(LCV)中での細菌数測定において、x, y両遺伝子の欠損株とも野生株よりも顕著に少ないものの、細胞内増殖能を完全に欠損するIV型分泌系欠損株よりも有意に多いことが認められた。このため、細胞内増殖能について詳細に検討したところ、感染24-48時間後以降、野生株と同様の増殖が見られることを見出した。何らかの理由により、細胞内増殖開始が遅れていることが考えられた。遺伝子x, yは細菌内でのシグナル伝達に関わることが予想されたため、RNA-Seqによる標的遺伝子の同定を試み、レジオネラが感染能を獲得する増殖休止期において、遺伝子x, yの欠失により強く発現が減弱する複数の標的候補遺伝子を得ることができた。今後、RT-PCR法などによる確認実験や感染細胞内での遺伝子発現の検討を行うとともに、全ての結果を統合することにより、遺伝子x, yの作用機序を明らかにしていきたい。
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