研究課題/領域番号 |
19H03473
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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研究分担者 |
塚本 善之 大分大学, 医学部, 助教 (00433053)
濱田 文彦 大分大学, 医学部, 教授 (70252707)
矢原 耕史 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (70542356)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / オルガノイド / 胃癌 |
研究実績の概要 |
ヘリコバクター・ピロリ (ピロリ菌)は全人類の約半数が感染し、胃癌を始めとする多彩な疾患を引き起こす世界最大の感染症の一つであるが、未だ解決していない「問い」がある。すなわち、1) 一部のピロリ菌感染者だけが疾患を発症し、しかも人によって発症する疾患に違いがでるのはなぜだろうか? 2) 胃癌発症率に地域差が生じるのはなぜだろうか? これらの「問い」に答える手段として、我々は、新しい疾患モデルとして注目されるオルガノイド(胃ではガストロイド)を2次元化し、さらに上皮下組織の一部再現モデルとして、2次元化したガストロイドとT細胞を共培養する系を米国にて確立した。予備実験で、既知の病原因子による炎症性サイトカインの発現パターンが、ピロリ菌感染ガストロイドでは、胃癌上皮細胞株の場合とかなり異なることが明らかとなった。そこで我々は、既知の病原因子の真の機能の探求、さらに、我々が保有する世界最大規模のピロリ菌を用いて、菌の全ゲノム解析を行い、疾患の発症に関与する新規病原因子の発見を目指す研究を展開する。 今年度は、我々が米国にて確立した2次元化したガストロイドとT細胞を共培養する系を大分大学にて確立する準備を行った。ガストロイドに関しては、分担研究者の塚本が中心となり、確立し、現在は系の確立に向けた準備を行っている。さらに、未知のピロリ菌病原因子を検索するために、GWASを用いた解析を行い、胃癌に関連すると考えられる遺伝子変異の候補を10個以上得ることができ、その成果は大学院生が韓国で発表し、Young Awardを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元化したガストロイドとT細胞を共培養する系の大分大学における確立については、まだ途上の段階であり、やや遅れている感はあるが、未知のピロリ菌病原因子の検索では、すでに候補となる遺伝子変異を見出すことに成功し、予定以上の成果を見せている。そのため、総合的には、ほぼおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、米国にて確立した2次元化したガストロイドとT細胞を共培養する系を大分大学にて確立し、まずはこの系にピロリ菌を共培養して、アレイなどを用いて網羅的に発現の更新、減弱している因子を探索する。同時にすでに米国での実験で十二指腸潰瘍株で誘導されているPD-L1などについても詳細な検討を行う(本件については、米国の共同研究も続けていく)。さらに、GWASにて得られた胃癌に関連すると考えられる遺伝子変異の候補についても、変異株を作成するなどして、ガストロイドの系での共培養実験などでその機能を調べていく。
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