研究実績の概要 |
本年度は、全国の医療機関から1,000例(萎縮性胃炎、胃癌、胃潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃十二指腸潰瘍)の生検体(胃液、胃組織、血清、便)収集・解析を目標とした。しかし、血清検体の収集を臨床検査企業が行うことになった。それに伴う研究計画の変更を各医療機関の倫理委員会での承認に時間を費やした結果102例の生検体収集に留まった。現在も生検体収集は継続しており、令和4年度中に目標の1,000検体の解析を終える予定である。102例のうち胃生検体から菌体のhsvA遺伝子を標的としたPCRによる検出で、20例がハイルマニイ菌感染と判定された。血清中のハイルマニイ菌に対する抗体検出を行うELISAでは、20例全てが陽性判定であった。また、PCRで陰性判定の非感染45例のうち、2例についてはELISA陽性であり、病態からハイルマニイ菌感染と判定した 「胃生検体を必要としない抗体検査や抗原検査でのハイルマニイ菌感染診断法」に関する特許は令和3年度は、欧州出願自主補正と米国特許庁へ情報公開手続き(Internal Search Report【ISR】, 国際調査報告)を行った。令和3年度は、新たに3報の特許を出願した。(1)菌体外膜成分を抗原としたハイルマニイ菌の血清抗体の検出に関する特許。(2)全菌体成分を抗原としたハイルマニイ菌の血清抗体の検出に関する特許。(3)菌体可溶化成分を抗原としたハイルマニイ菌の血清抗体の検出に関する特許。いずれも出願人:学校法人北里研究所, 国立感染症研究所長, A社で、発明者:松井英則, 林原絵美子, 鈴木仁人, 他2名(A社)である。 当該研究成果により、林原絵美子は、令和3年度の第5回日本医療研究開発大賞で、日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞した。また、松井英則は日本ヘリコバクター学会学術賞(基礎)を受賞した。
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