研究課題/領域番号 |
19H03475
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川口 敦史 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90532060)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インフルエンザウイルス / 炎症 / 気道上皮組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究代表者らが新規に同定した、インフラマソーム複合体に含まれる気道上皮細胞特異的な病原体センサー分子MxAによるインフルエンザウイルス認識機構を明らかにすることである。特に、鳥インフルエンザが新型ウイルスとしてヒトでの感染性を獲得するには、MxAからの逃避変異が必要であることが示唆されており、本研究では、MxAを介した炎症応答によって規定されるインフルエンザウイルスの宿主域決定基盤を明らかにする。 令和元年度では、MxAとNP、及びMxAとアダプター分子であるASCとの相互作用機構を生化学的に解析した。その結果、MxAは鳥インフルエンザ由来のNPと強く結合することを見出した。また、MxAのGTPaseドメインを介して、ASCのPYDドメインと結合することも明らかにした。さらに、気道上皮細胞にNP遺伝子を発現させるだけでもインフラマソームを活性化できることを見出し、インフルエンザウイルス以外の病原体でもNP遺伝子を導入することで炎症応答を再構成することが可能であることを明らかにした。 活性化されたインフラマソーム複合体はプリオン様の凝集体を形成し、感染細胞から放出後、マクロファージに貪食されることで自己増殖し、非感染マクロファージでも炎症応答を引き起こすことが明らかになっている。そこで、マクロファージ特異的に低分子量Gタンパク質であるArf6を欠損させ、貪食能を失ったノックアウトマウスを作製し、インフルエンザウイルスを感染させたところ、ウイルスが増殖するのに対し、炎症応答レベルが抑制されることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生化学的にMxAと標的分子の結合を再構成でき、順調な結果が得られている。また、in vivoでもインフラマソームによる病態発現機構を解析するモデル動物が構築でき、今後も順調な研究成果が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
MxAと標的分子の複合体について、クライオ電顕もしくはNMR法による解析を行う。また、Arf6ノックアウトマウスを用いた病態発現機構の解析も進める予定である。
|