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2020 年度 実績報告書

高速原子間力顕微鏡によるプリオン立体構造変換反応のリアルタイム観測

研究課題

研究課題/領域番号 19H03476
研究機関岐阜大学

研究代表者

桑田 一夫  岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 教授 (00170142)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード異常型プリオン / 高速原子間力顕微鏡 / 立体構造 / オリゴマー / NMR / 動的光散乱
研究実績の概要

高速原子間力顕微鏡を用い、プリオン蛋白質における生理的条件下での分散状態を調べた。ヒトプリオン蛋白質は、正常型構造においても、単量体ではなく、6量体までのオリゴマーとして、存在していることが分かった。動的光散乱を用いても、正常型プリオン蛋白質は、多分散状態であった。
ところが、ここにαシヌクレインの単量体を入れると、プリオン蛋白質の多分散状態は、解け、まず、αシヌクレインとヘテロ3量体を形成し、その後、ヘテロ2量体となって平衡に達することが分かった。
この2量体において、正常型プリオン蛋白質は構造が破壊され、モルテングロビュール状態となる。一方、αシヌクレインは、ホットスポットやC端末において、正常型プリオンと特異的に結合し、そのアミロイド化を抑制する。このようにαシヌクレインは、シャペロンとして働き、プリオンの異常化、及び凝集を抑制する、と考えられる。
以上の研究により、高速原子間力顕微鏡により、プリオンの単量体、オリゴマー化、異常化抑制機構を解明することができた。
高速原子間力顕微鏡の特徴として、タンパク質1分子の形状は観測可能であるが、定量的なサイズ計測は、高さ解析でのみ可能であることが分かった。形状として、例えば、Head&Tailのような特徴的な形状は観測できるが、サイズは相対的なものであり、今後の異常化構造の解析には、このような高速原子間力顕微鏡の特徴を踏まえて行うべきである、と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高速原子間力顕微鏡による正常型プリオンの形状計測に成功した。これにより、正常型プリオンが、単量体から6量体まで、様々なオリゴマー状態で分散していることが分かった。また、他の分子との相互作用により、コヒーレントな2量体構造になることも、定量的に形状観測することができた。また、NMRや動的光散乱を、補助的手段として利用可能であることが分かった。
これらの知見により、異常感染構造の形状観測を行う上での、高速原子間力顕微鏡の技術的特性を掴むことができたので、異常感染構造を取り扱う上での技術的基盤が整った、と考えられるため。

今後の研究の推進方策

Quick法またはPMCA法を用いて、リコンビナントプリオンから増幅したスクレイピー型プリオンを最初の標的とする。本プリオンのマウスに対する感染性は、既に確認されているものを使用する。本試料には、高分子としては、プリオンのみを含んでいるため、同定が容易であり、構造の多形性も容易に確認できる。高速原子間力顕微鏡においては、水平方向の広がりは、定量的な意味はないが、おおよその形状は観測可能である。分子のサイズは、高さから定量可能である。さらにNMRや動的光散乱を補助的に用いる。このようにして、まず、感染性プリオンの構造やその多形性を明らかにする。
ついで、この感染性プリオンの基本構造情報に基づき、プリオンに感染した動物の脳乳液から、感染性プリオンを同定し、その立体構造を解明する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Monomeric α-synuclein (αS) inhibits amyloidogenesis of human prion protein (hPrP) by forming a stable αS-hPrP hetero-dimer.2021

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Yamashita, Yuji O Kamatari, Ryo Honda, Ayumi Niwa, Hiroyuki Tomiata, Akira Hara, Kazuo Kuwata
    • 雑誌名

      Prion

      巻: 15 ページ: 37-43

    • DOI

      10.1080/19336896.2021.1910176.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Short disordered protein segment regulates cross-species transmission of a yeast prion2020

    • 著者名/発表者名
      Toshinobu Shida, Yuji O Kamatari, Takao Yoda, Yoshiki Yamaguchi, Michael Feig, Yumiko Ohhashi, Yuji Sugita, Kazuo Kuwata, Motomasa Tanaka
    • 雑誌名

      Nature chemical biology

      巻: 16 ページ: 756-765

    • DOI

      10.1038/s41589-020-0516-y.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Improved Anti-Prion Nucleic Acid Aptamers by Incorporation of Chemical Modifications2020

    • 著者名/発表者名
      Jussara Amato, Tsukasa Mashima, Yuji O Kamatari, Kazuo Kuwata, Ettore Novellino, Antonio Randazzo, Concetta Giancola, Masato Katahira, Bruno Pagano
    • 雑誌名

      Nucleic Acid Ther.

      巻: 30 ページ: 414-421

    • DOI

      10.1089/nat.2020.0899.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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