研究課題/領域番号 |
19H03477
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 正治 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (90820788)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アレナウイルス / 遺伝子発現 / 非翻訳領域 / ウイルスベクター / マイナス鎖RNAウイルス / 翻訳制御 |
研究実績の概要 |
アレナウイルスのmRNA(vmRNA)は5'末端にcap構造を持つが、3'末端はポリA付加を受けないという特徴がある。蛍光レポーター遺伝子(ZsGreen)のOFRをリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)mRNA由来の5'-UTR(cap構造有り)及び3'-UTR(ポリA付加なし)で挟んだvmRNA様mRNA(vlmRNA)をin vitro合成し、導入した細胞内でのZsGreen蛍光強度を測定することで、IGRに由来するvmRNAの3'-UTRによる翻訳制御を効率よく解析するレポーターシステムを構築してきた。本研究ではこれまでに、翻訳効率の良いLCMVヌクレオプロテイン(NP) mRNAの3'-UTRのごく狭い領域(TRR)が翻訳制御に重要であることを明らかにした。さらに、TRRを細かく分割して変異を導入し、翻訳制御に重要な配列の同定を試みたが、いずれの変異も翻訳効率を大幅に減少させた。配列のみでは翻訳効率との関連が説明できなかったため、予測2次構造を調べると翻訳効率の良いvmRNAの3'-UTRのTRRは小さなステムループ構造を形成し、逆に翻訳効率の悪いvmRNAの3'-UTRのTRRはそのような構造を取らないことが判明し、TRRの2次構造が翻訳制御に重要な役割を果たすことが示唆された。ZsGreen遺伝子直下のTRRに変異を導入した組換えLCMVを作製したところ、レポーターシステムの結果と同様のZsGreen発現の変化を確認することができた。また、翻訳制御に関わる宿主タンパク質を同定するため、翻訳効率の高いNP vmRNA及び低い糖タンパク質前駆体(GPC)mRNAの3'-UTRに結合する宿主タンパク質を免疫沈降法により回収した。質量分析により、沈降物に含まれる宿主タンパク質群を同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が確立したレポーターシステムに用いるvlmRNAのin vitro合成の効率が改善し、多様な配列の3'-UTR配列を持つvlmRNAの翻訳効率の解析が進んだことで、配列だけでなく、2次構造に翻訳制御との関連を見いだすことができた。また、TRR配列による翻訳制御をウイルスレベルでも確認することができた。さらに、NP mRNAやGPC mRNAの3'-UTRに結合する宿主タンパク質の網羅的な同定に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず、TRRの構造と翻訳効率の関係をより詳細に解析する。ウェブツールを利用したRNAの2次構造予測を行い、NP mRNAのTRRの構造に高い類似性があるが、配列は大きく異なる合成TRR(TRRsyn)を複数デザインする。我々が確立したレポーターシステムにより、TRRsynを含む3'-UTRの翻訳効率を評価する。TRRの2次構造が翻訳制御に与える影響を明らかにし、令和3年度中にこれまでの成果をまとめて論文発表する。同定したNPあるいはGPC mRNAの3'-UTR特異的に結合する宿主タンパク質が翻訳制御機構に関与するのか調べるため、同定した宿主因子のノックアウト細胞でのvlmRNAの翻訳効率を評価する。
|