研究課題/領域番号 |
19H03478
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
末永 忠広 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20396675)
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研究分担者 |
荒瀬 尚 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10261900)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水痘帯状疱疹ウイルス / 単純ヘルペスウイルス / 糖タンパク質 / シアル酸 |
研究実績の概要 |
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の糖タンパク質グリコプロテインB (gB)が、宿主細胞に発現している分子Sialic acid-immunoglobulin like lectin-7 (Siglec-7)と結合することを見出した。Siglec-7とgBとの結合には、gB上のシアル酸が必須であることが明らかとなった。また、gBとSiglec-7の結合によって、エンベロープを持つウイルスの宿主細胞への侵入(エントリー)に必須なエンベロープと細胞膜の融合を誘導することを示した。さらに、Siglec-7発現細胞は、非発現細胞に比較してVZV感染に感受性であることが判明した。VZV感染において、Siglec-7導入細胞だけではなく、生理的発現細胞においても、Siglec-7がVZVのエントリーレセプターとして機能していることが示唆された。Siglec-7は血球細胞に発言しているため、血球細胞もしくは血球細胞細胞株を用いて、Siglec-7を介したVZV感染を検討する。 単純ヘルペスウイルス(HSV)のgBレセプターであるMAG、PILRを介したエントリーにおいて、糖鎖修飾酵素強制発現細胞や糖鎖修飾酵素を欠損した細胞に由来するHSVの解析から、HSVの糖鎖修飾に依存して、MAGあるいはPILRに感染指向性を示すことを確認した。 ただし、単一糖鎖修飾酵素欠損細胞では、MAGやPILRとgBとの結合性が野生型細胞に発現させたgBと変化がなく、単一糖鎖修飾酵素欠損細胞由来HSVの指向性も野性型細胞由来HSVと変化がなかったが、複数酵素の同時欠損細胞由来HSVを用いて初めて、gB結合とHSV感染の指向性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖鎖修飾酵素強制発現細胞と糖鎖修飾酵素を複数欠損した細胞に発現したgBとMAGやPILRとの結合性で矛盾が生じ、酵素Xによってのみ形成されるとされていた糖鎖Aが、糖鎖Bの形成にも関与することがわかった。このことによって、gB結合性の指向性、HSV感染指向性にも影響が及んでいる可能性がある。 また、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)の感染阻害宿主因子解析のための、感染効率増大を検出する方法の確立が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖修飾酵素欠損細胞由来では、当初の予想とは異なった糖鎖が形成され、HSV gBの糖鎖修飾が変わることが予想される。HSVの糖鎖修飾による感染の指向性は、in vivoにおいての侵入経路にも影響が及ぶことから、感染経路も変えたin vivo感染実験を実施する必要が生じた。 HHV-6の感染阻害宿主因子解析のための、高感度感染検出法を用いる。
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