研究課題/領域番号 |
19H03480
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
押海 裕之 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (50379103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然免疫 / ウイルス / インターフェロン |
研究実績の概要 |
自然免疫はウイルス感染初期の生体防御に必須である。また、自然免疫では樹状細胞の成熟化や抗原提示を介して獲得免疫系を惹起することからワクチンの予防効果などにも関与する。一方で、過剰な自然免疫は自己免疫疾患などにもつながることから、負の側面もある。我々はウイルスやウイルス成分に対する自然免疫機構について研究を進め、血液中に存在するエクソソームなどの細胞外小胞には免疫制御性のmicroRNAが含まれること、さらにmiR-192と呼ばれるmicroRNAが炎症性サイトカインであるIL-6などの産生を抑制することを明らかとした。このIL-6は加齢とともに血中での濃度が上昇し、マウス動物モデルでは加齢によるIL-6の上昇がワクチンの予防効果を減少させることを明らかとした。そこで、IL-6の産生を抑制するmiR-192を含む細胞外小胞を老化したマウスに投与したところ血中のIL-6が下がり、ワクチン接種後の特異抗体価も大きく上昇することを発見した。これらは、老化した個体でのIL-6産生などの亢進した自然免疫応答が逆にワクチンの予防効果を下げていることを示唆しており、今後、このような細胞外小胞を用いることで、高齢者にも高い予防効果を示すワクチンを開発できると期待される。これらの成果はiScience誌に責任著者として発表した。 新型コロナウイルス感染症はパンデミックとなり深刻な問題となっている。その原因となるSARS-CoV-2ウイルスに対する自然免疫については十分に明らかとなっていなかったことから研究を進め、我々はその自然免疫の分子機構について新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおりウイルス感染に対する自然免疫応答の研究を進め、ZNF598分子の機能と役割について解明し、その成果は2019年度にCell Reports誌に発表した。2020年度はLuple分子の機能解析を進め、この分子がケモカイン産生に制御することをmicroarray解析により明らかとした。またLupleのノックアウトマウスを既に作製しており、今後の生体内での解析においてもLuple分子の重要性が明らかになると期待される。また新型コロナウイルス感染症が問題となり、それに対する自然免疫応答についての解明が喫緊の課題となったため、その自然免疫応答についても分子機構を解明し、現在、論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症が重大な問題となったため、当初の予定に加え、新型コロナウイルスに対する自然免疫応答についても調べる予定である。また、予定通り、今後もLupleの自然免疫における役割と、TBK1を中心としたクロストーク機構について分子生物学的な解析を行い、その分子メカニズムを解明するとともに、マウス動物モデルを用いた研究を進め、生体内での機能について解明する。
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