研究課題
ウイルス中和抗体産生制御機構の解明は、新型コロナウイルスを含む感染症ワクチン開発の基礎となる。我々と米国のSantiagoらは、マウスレトロウイルス感染時に中和抗体産生を制御する宿主遺伝子を同定する過程で、独立かつ同時にシチジンデアミナーゼAPOBEC3(A3)の系統間多型を発見した。C57BL/6(B6)系統の持つA3対立遺伝子産物は感染・発病に対し強い抵抗性を賦与するが、ウイルス粒子に取り込まれ標的細胞で複製過程を直接制限するA3が、中和抗体産生を制御するしくみは明らかでない。今年度は、「A3はBリンパ球核内に局在し、免疫グロブリン遺伝子可変部の体細胞高頻度突然変異を誘導する」との仮説を検証するため、我々が樹立したA3分子N-末端にin-frameでFLAGタグを挿入したB6マウス系統を用いて、免疫系細胞におけるA3タンパク質発現制御と細胞内局在を解析した。A3対立遺伝子は共優性に発現し、ホモ接合個体ではヘテロ接合個体に較べリンパ球のA3タンパク質発現量が有意に高かった。脾細胞のA3遺伝子発現はLPS刺激により二相性に上昇したが、刺激後のタンパク質発現量はB細胞に高く、T細胞では低かった。ホモ接合マウスの免疫組織化学的解析では、脾臓やパイエル板におけるA3タンパク質発現が濾胞に局在し、特に胚中心細胞の細胞質で高かった。蛍光セルソーター解析ではGL-7陽性・CD95陽性・IgD陰性の胚中心B細胞でA3タンパク質発現が特に高く、ヒツジ赤血球投与で胚中心細胞の数は増えたが、個々の細胞におけるA3発現量に変化は無かった。以上から、A3タンパク質はBリンパ球に発現し、胚中心細胞への分化によりこれが著しく亢進するが、体細胞突然変異誘発に必要な核への局在は起こらないこと、T-B細胞間相互作用とLPS刺激では、A3タンパク質の発現誘導機構が異なることが明らかとなった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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