本研究課題は,Regnase-1およびUPF1によるRNA制御を基点に,免疫におけるmRNAの翻訳制御機構の解明を目的としている。これまでの研究より,RNA分解酵素Regnase-1は翻訳が生じている免疫関連mRNAの分解を誘導することが分かっているが,本年度は,主にRegnase-1を介したmRNA翻訳制御機構に関して研究を進めた。Regnase-1は標的mRNAに存在するステムループ構造を認識して,そのmRNAの分解を行うが,細胞内でRegnase-1の標的RNAがどのような構造を取っているかは不明である。そこで,icSHAPE seq法により細胞内でのRNA構造を網羅的に解析した。icSHAPE seq法は,細胞内での1塩基レベルでRNAの構造の柔軟性を検出できる手法である。HeLa細胞をIL-1bで免疫刺激して,icSHAPE seqを行った結果,刺激時間によりRNAの構造がダイナミック変化していた。更に,Regnase-1 CLIP seqより同定された標的RNAのRNA構造について解析した結果,Regnase-1の標的RNAの構造も刺激により変化していた。この結果は,刺激によりRNA構造が変化することで,Regnase-1の結合および機能が変化していることを示唆している。そこで,Regnase-1の標的mRNAへの結合についてRNA免疫沈降法により検討した結果,RNA構造変化と一致して,Regnase-1の標的mRNAへの結合量およびRegnase-1によるRNA分解も変化していた。以上の結果より,本年度の研究では,Regnase-1の標的RNAの構造が免疫刺激により変化し,Regnase-1の機能が制御されていることが明らかとなった。
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