研究課題/領域番号 |
19H03490
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
金関 貴幸 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50531266)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 腫瘍免疫 / 腫瘍抗原 / T細胞 / HLA |
研究実績の概要 |
T細胞免疫系は遺伝子変異由来ネオアンチゲン以外にも幅広くがん細胞変化を感知し識別していると考えられる。新しいがん抗原タイプの発見とその産生メカニズム解明はがん免疫治療発展に直結する重要な課題である。我々はプロテオゲノミクスHLAリガンドーム解析法を用い、大腸がん細胞・組織HLAにナチュラル提示されるlong non-coding RNA(lncRNA)由来がん抗原ペプチドを同定し、その抗原性およびがん特異性を確認した。lncRNAがん抗原タンパク片は分解により検出できないものの、HLA結合するlncRNAペプチド配列は保護され細胞表面に提示される。これまでのデータはlncRNA翻訳とNonsense Mediated Decay(NMD)およびHLA抗原提示の関連性を示唆しており、lncRNAがん抗原を介した、NMD制御によるT細胞免疫応答コントロール・治療応用の可能性を示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マススペクトロメトリーと次世代シーケンサー解析(DNA-seq/RNA-seq)を併用したプロテオゲノミクスHLAリガンドーム解析により、がん特異的に発現し抗原性を有する新規がん抗原候補ペプチドを同定した。遺伝子過剰発現とノックダウン実験により、同ペプチドがlncRNA由来であること、およびT細胞応答がlncRNA発現量に依存することを証明できた。即ち、lncRNA翻訳が生じており、翻訳産物由来ペプチドががん細胞HLAに提示されている。同lncRNAに特異的反応するT細胞クローンは既に樹立済みである。続いて、がん細胞NMD阻害によるlncRNAがん抗原のHLA提示およびT細胞反応変化を確認した。これは薬剤阻害と遺伝子ノックダウンにて確認できた。以上、計画当初の実験仮説に基づいた研究成果であり、現在まで順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
lncRNAタンパク翻訳メカニズムは既知のものと異なる可能性が高い。NMDを中心にこのメカニズム解明を第一に考え研究計画を実行する。現在は、NMD異常がん細胞モデル(CRISPR/Cas9によるUPF/SMGノックダウン)を作成中であり、同モデルのプロテオゲノミクスHLAリガンドーム解析を通してHLA提示抗原レパートリーへのNMD影響を網羅的に検証する。我々はがん細胞で生じたNMD異常からlncRNA由来ポリペプチド翻訳が増加し、新規抗原のHLA提示を介して免疫応答を誘導する、新しい抗腫瘍CTL応答メカニズムの存在を提唱している。本研究課題を通してNMD制御とHLA抗原提示の関連性を明らかにし、lncRNAがん抗原に対するCTL免疫監視メカニズム解明を目指す。
|