BRCA変異陽性乳がんのPARP阻害剤による合成致死療法が開始されたが、PARP阻害剤耐性獲得が問題となっている。そこで、DNA2本鎖切断の相同組み換え修復機能(Homologous Recombination: HR)を抑制し、再度、PARP阻害剤に対し感受性にさせる耐性克服療法の開発を目的とする。PARP阻害剤の頻度の高い耐性獲得機序に、BRCA変異細胞における相同組換え修復機能の回復がある。そこで、HR経路で機能する分子を抑制して、再度、HR機能を低下させ、PARP阻害剤に対し感受性にさせる。本研究において、BRCA2は核内輸送体KPNA7との相互作用により核移行すること、また、KPNA7の阻害により、BRCA2の核移行及び核内のHR修復を阻止することを見出した。KPNAには7つのサブタイプ(KPNA1-7)があり、いくつかの核内タンパク質はKPNAとImportinの複合体で核に輸送される。 2021年度は、BRCA2がKPNA7のarmadillo repeat領域に結合することを報告した。BRCA2がKPNA7以外のサブタイプと相互作用するかどうかを調べたところ、BRCA2はKPNA7のarmadillo repeat領域に結合した。U2OS細胞において、KPNA1-7をsmall interfering RNA(siRNA)で連続的にノックダウンし、BRCA2の核局在を解析した。その結果、KPNA7をノックダウンするとBRCA2の核内輸送が阻害され、他のKPNAをノックダウンしてもほとんど影響がないことがわかった。しかし、KPNA7を発現していないHeLaS3細胞では、KPNA5がBRCA2の核内輸送を阻害していた。今後、BRC2Aの核内輸送系を明らかにするために、BRCA2、KPNA7、Importinの複合体形成の解析を行っていく。
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