研究課題
HGF(肝細胞増殖因子)とその受容体METを介したシグナルの活性化はがんの悪性進展、とりわけがん転移性の獲得・亢進や分子標的薬に対する薬剤耐性に深く関与することが多数報告されてきた。ただし、HGFはMET受容体を活性化できない不活性前駆体HGFとして細胞外に分泌され、セリンプロテアーゼ(HGF-activatorやmatriptaseなど)によってプロセッシングされ、MET活性化能をもつ活性型HGFに変換される。活性型HGFへの局所的変換はMET活性化のカギとなるプロセスであり、活性型HGFの特異的検出や阻害はがんの診断・治療につながる。RaPIDシステムによってHGFに結合する特殊環状ペプチドHiP-8(HGF-inhibitory Peptide-8)を取得した。HiP-8は前駆体HGFには結合することなく、活性型HGFに選択的に結合し、HGFのMET結合能を阻害した。HiP-8は12個のアミノ酸からなり、抗体に匹敵する極めて高い親和性(Kd = 0.4 nM)と特異性で活性型HGFに結合する。環状ペプチドの優位性の一つは容易な化学修飾である。標識HiP-8をプローブとするPETイメージングにおいて、HiP-8は活性型HGFレベル、これによるMET活性化レベルの高い腫瘍に集積し、PET診断用分子として優れた性能を示した。一方、がん転移におけるHGF-MET系の意義を明らかにすべく、悪性黒色腫肺転移モデルを用いて、がん転移に先立つ活性型HGFへの変換、MET活性化を介したがん微小環境形成のメカニズムを明らかにするとともに、HiP-8投与による肺転移抑制を明らかにした(論文準備中)。高い標的特異性や組織集積性をもつ環状ペプチド分子技術はがんの基礎研究・診断・治療に飛躍的進展をもたらすことが期待される。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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