研究課題
癌が原発巣から転移する際には、実際の転移が起きる前に、転移先の臓器において癌細胞の 生着を有利にする“転移前ソイル”と呼ばれる状態が形成される。これまでの研究から、転移前ソイルを消去することが癌転移の抑制には重要であることがわかってきた。近年、特殊なNK(ナチュラルキラー)細胞が転移前ソイルを解消し、転移を抑制する抗転移細胞として働くことを発見した。この細胞は肝臓で刺激を受けて教育され、肺で機能するという、新しいタイプの生理機能を持つ。担癌マウス(癌を皮下あるいは同所性に移植したマ ウス)を用いた研究では、原発巣が小さいときには、その抗転移能は十分に発揮されているが、原発癌の進行に伴い、その能力が消失することが示唆されている。本研究では、細胞の機能が原発癌の進行とともに失われるのはなぜか、抗転移能を回復させることはできないかどうかを 動物モデル・細胞生物学・生物化学の複合的観点から明らかにすることを目指した。今回の研究結果として、関連する遺伝子群をマイクロアレイを用いてスクリーニングし、候補の因子を11個に絞り、機能的スクリーニングを行った。このうち1つの遺伝子が、抗転移細胞を疲弊させるのに関連すること、この因子を制御すると疲弊から回復し、抗転移細胞として機能復活することが分かった(現在投稿準備中)。また肺の転移前ソイルにおいて、従来のタンパク質とは異なり、核酸RNAにより抗転移細胞は活性化されることを見出し、論文に発表した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nature Communications
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41467-021-23969-1