研究課題
我々はlncRNAががん細胞の運命転換シグナルの伝達機構とエピジェネティックな機構をつなぐキープレイヤーであると考えている。我々はこれまでの研究でTGFβで誘導され上皮間葉転換(EMT)に関与する新規長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)としてELIT-1を見出した。本研究ではELIT-1とSmadに関し以下の知見を得た。ELIT-1はSmad2とは結合せずにSmad3と選択的に結合した。ELIT-1-Smad3複合体はは強制発現したELIT-1およびSmad3で確認されただけでなく、内因性のELIT-1およびSmad3でも複合体を形成した。内因性ELIT-1-Smad3複合体はTGFβ刺激により増加した。ELIT-1はリン酸化ミミックなSmad3と優先的に結合した(強制発現系)。ELIT-1-Smad3複合体は細胞質より核内で主に検出された。さらに、ELIT-1はSmad3の標的遺伝子プロモーターへのリクルートを促進する機能を持っていることがわかった。ここまでの研究成果はCancer Reseach誌に発表した。さらに我々は、ELIT-1がH3K27脱メチル化酵素KDM6Bとも結合することがRIP-assayによって見出した。このELIT-1のKDM6Bとの結合特異性を解析している途中、当初の予想に反し、TGFβで誘導されるELIT-1以外の新規lncRNAを発見し、ELIT-1に類似した機能を有する可能性があることが判明した。研究遂行上、この新規lncRNAの検証が不可欠なため、この新規lncRNAの標的遺伝子とEMT誘導機構等の機能を調べる実験を追加で実施した。その結果、このlncRNAはTGF-betaで誘導されるが、EMTへの影響はほとんどなく、Smadとも結合しないことが判明した。
3: やや遅れている
ELIT-1のKDM6Bとの結合特異性の解析の途中、当初の予想に反し、TGFβで誘導される新規lncRNAを発見し、ELIT-1に類似した機能を有する可能性があることが判明した。研究遂行上、この新規lncRNAの検証が不可欠なため、この新規lncRNAの標的遺伝子とEMT誘導機構等の機能を調べる実験を追加で実施する必要が生じたため。
ELIT-1様な機能が想定されたlncRNAはTGFβで誘導されるが、EMTへの影響はほとんどなく、Smadとも結合しないことが判明し、今後はこのlncRNAを研究の対象から除くことにした。今後は、まずELIT-1とKDM6BおよびSmad3の複合体の解析を行う。さらに最終年度は、RIP-SeqによるKDMと結合するlncRNAの網羅的解析の条件を決め、それを実行する。
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Cancer Research
巻: 79 ページ: 2821-2838
10.1158/0008-5472.CAN-18-3210
https://www.hama-med.ac.jp/education/fac-med/dept/mol-biol/index.html