研究課題/領域番号 |
19H03502
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高折 晃史 京都大学, 医学研究科, 教授 (20324626)
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研究分担者 |
村川 泰裕 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50765469)
白川 康太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (80728270)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | APOBEC3 / 癌のクローン進化 / 癌の多様性 / 治療抵抗性 / マウスモデル / APOBEC signature / CAGE法 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
APOBEC3B(A3B)はDNAシトシン脱アミノ化酵素でシトシンを脱アミノ化しチミンへと遺伝子変異を導入する。乳がんなど多くのがん腫でA3Bの過剰発現、およびAPOBECパターンの変異の蓄積が報告され、がんのクローン進化における中心的な役割が近年急速に提唱されている。我々は多発性骨髄腫においてA3Bの過剰発現が独立した予後不良因子であることを見出し、その変異活性がこれら疾患の病勢増悪、治療抵抗性に影響していると仮説を立てた。 本研究では多発性骨髄腫をモデルとして、再発・治療抵抗性獲得へのA3Bの役割を検討するため、①ゲノム統合解析、②相互作用蛋白によるA3B機能調節、③A3B過剰発現マウスおよび骨髄腫ゼノグラフトモデルのシングルセルA3B変異を行う。包括的に骨髄腫におけるA3Bゲノム変異導入機序と治療抵抗性への影響を検討し、最終的に④A3B活性阻害による新規治療開発を目的とする。 研究実績として、①CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法による骨髄腫細胞株、およびCD138 MACSによる純化骨髄腫細胞を含む16例の臨床検体の転写ネットワーク解析を行い、3237の新規エンハンサーを含む6735のエンハンサーを同定した。②患者骨髄を用いてシングルセルトランスクリプトーム解析からA3Bが細胞周期依存性に一部の腫瘍細胞で一過性に過剰発現することを見出した。③A3B-FLAGを過剰発現するHEK293Tを用いた系、および骨髄腫細胞株RPMI8226、AMO1細胞を用いて質量分析を行い、複数のA3B結合蛋白群を同定した。④A3B過剰発現マウスを骨肉腫やリンパ腫などを自然発症するp53ヘテロKOマウスと交配し、A3B過剰発現によりp53ヘテロ欠損マウスの腫瘍発生率を増加することを発見し観察中である。の研究成果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の進捗状況により概ね順調に進展していると判断した。 ・CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法による骨髄腫細胞株、およびCD138 MACSによる純化骨髄腫細胞を含む16例の臨床検体の転写ネットワーク解析を行い、3237の新規エンハンサーを含む6735のエンハンサーを同定した。 ・患者骨髄を用いてシングルセルトランスクリプトーム解析からA3Bが細胞周期依存性に一部の腫瘍細胞で一過性に過剰発現することを見出した。 ・A3B-FLAGを過剰発現するHEK293Tを用いた系、および骨髄腫細胞株RPMI8226、AMO1細胞を用いて質量分析を行い、複数のA3B結合蛋白群を同定した。 ・A3B過剰発現マウスを骨肉腫やリンパ腫などを自然発症するp53ヘテロKOマウスと交配し、A3B過剰発現によりp53ヘテロ欠損マウスの腫瘍発生率を増加することを発見し観察中である。
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今後の研究の推進方策 |
・対照として正常形質細胞のCAGEデータを取得し比較する。 ・細胞株でエンハンサーをCRISPR/Cas9を用いて破壊した時の形質を解析する。 ・A3BによるAPOBEC signature変異のマイナークローンを検出するためCD138純化骨髄腫臨床検体の全ゲノム解析を行う。 ・A3B結合蛋白をsiRNAでノックダウンした際のA3B活性を検討する。 ・p53ヘテロ欠損マウスに発生する腫瘍をゲノム解析し、A3B過剰発現によるAPOBEC signature変異を全ゲノム解析で検討する。
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