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2021 年度 実績報告書

転移前微小環境における新しい免疫学的血栓形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03506
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

丸 義朗  東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00251447)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード転移前微小環境 / 血管透過性 / 血液凝固 / TLR4 / S100A8
研究実績の概要

Toll様受容体4の内因性リガンドであるS100A8は強力な血管透過性亢進作用をもち、これまでに転移前微小環境形成因子として同定した分子である。当該年度では、S100A8や他のTLR4内因性リガンドに関連した分子機序の解析を行い、主に、下記1.~2.の研究成果を得た。
1.急性呼吸窮迫症候群モデルマウスを用いたS100A8の関与
当該年度において、野生型マウスへのS100A8やリポポリサッカリド(LPS)の気管内投与により、急性呼吸窮迫症候群発症時に認められる硝子膜に類似した硝子膜様の構造変化すること、S100A8やLPSの気管内投与において転移前肺微小環境形成時に認められる骨髄由来抑制性細胞の肺への動員が亢進することを見いだした。
2. 骨髄マクロファージ培養系におけるS100A8及びSAA3の分泌におけるLOX1の関与
レクチン様酸化LDL受容体-1 (LOX-1)は血管内皮細胞やマクロファージに発現するC型レクチン受容体の一つであり、血管内皮不全やマクロファージの泡沫化を促進して動脈硬化の増悪化に関与する。本年度はS100A8及びSAA3の分泌機構におけるLOX-1の関与を調べるため、LOX-1遺伝子欠損 (LOX-1-KO)マウス由来の骨髄マクロファージ培養系を用いた解析を行った。その結果、LOX-1-KOマウス由来の骨髄マクロファージにおいて、LPSとNigericinの段階的処理によるNLRP3-カスパーゼ-1系の活性化とGasdermin Dの分解によるパイロトーシスが野生型と同程度に引き起こされ、培養上清中のIL-1β、S100A8及びSAA3の分泌量は野生型と比べ変化は認められなかった。これらの結果から、宿主LOX-1は骨髄マクロファージにおけるS100A8及びSAA3の分泌には関与しないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

S100A8は、急性呼吸窮迫症候群に関与することが示唆されており、当該年度において野生型マウスにS100A8やLPSを気管内投与することにより、急性呼吸窮迫症候群発症時に認められる硝子膜に類似した硝子膜様の構造変化することを見いだした。次年度以降は凝固関連因子の発現解析やS100A8ノックアウトマウスを用いた解析を進める。

今後の研究の推進方策

転移成立前後におけるフィブリンの発現に対するS100A8-TLR4シグナルの関与を明らかにするため、S100A8コンディショナルノックアウトマウスを用いて、担がんマウスの肺転移を有する肺を採取し、免疫組織学的染色により血管透過性亢進領域と非亢進領域の間でフィブリノーゲンや他の凝固関連因子の発現を解析する。急性呼吸窮迫症候群モデルマウスを用いてフィブリノーゲンや他の凝固関連因子の発現を解析する。
さらに、LOX-1-KOマウスを用い、LLC細胞の皮下移植による担がんモデルを作製し、転移前肺におけるIL-1β、S100A8及びSAA3のmRNA発現に及ぼす宿主LOX-1欠損の影響を調べる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Extracellular mRNA transported to the nucleus exerts translation-independent function.2021

    • 著者名/発表者名
      Tomita T, Kato M, Mishima T, Matsunaga Y, Sanjo H, Ito KI, Minagawa K, Matsui T, Oikawa H, Takahashi S, Takao T, Iwai N, Mino T, Takeuchi O, Maru Y, Hiratsuka S.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 12 ページ: 3655

    • DOI

      10.1038/s41467-021-23969-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] S100A8 may govern hyper-inflammation in severe COVID-19.2021

    • 著者名/発表者名
      Deguchi A, Yamamoto T, Shibata N, Maru Y.
    • 雑誌名

      FASEB J.

      巻: 35 ページ: e21798

    • DOI

      10.1096/fj.202101013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] S100A8を標的とした新規がん微小環境改善薬の開発2022

    • 著者名/発表者名
      出口敦子、西川喜代孝、丸義朗
    • 学会等名
      日本医療研究開発機構革新的医療技術創出拠点令和3年度成果報告会
  • [学会発表] 喫煙による転移前微小環境形成の促進と血清アミロイドA3の意義2021

    • 著者名/発表者名
      出口敦子、丸義朗
    • 学会等名
      喫煙科学研究財団第35回令和2年度助成研究発表会
  • [学会発表] 転移前微小環境形成による転移促進2021

    • 著者名/発表者名
      丸義朗、出口敦子
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
    • 招待講演
  • [図書] Inflammation and metastasis (2nd edition).2021

    • 著者名/発表者名
      Maru Y.
    • 総ページ数
      538
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9789811617560
  • [備考] 東京女子医科大学 薬理学講座 ホームページ

    • URL

      https://www.twmu.ac.jp/yakuri/index.html

  • [備考] 東京女子医科大学 薬理学講座 業績ページ

    • URL

      https://gyoseki.twmu.ac.jp/twmhp/KgApp?kozac=C10600000000&year=2022

  • [産業財産権] S100A8阻害ペプチドとこれを含む疾患治療薬2021

    • 発明者名
      丸義朗、出口敦子、髙橋美帆、西川喜代孝、大戸梅治
    • 権利者名
      学校法人東京女子医科大学、学校法人同志社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2021/020095
    • 外国

URL: 

公開日: 2023-03-23  

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