我々はこれまでに、がんの転移には転移する前の段階で、転移前微小環境が形成されることを見いだしてきた。転移前微小環境とはがん微小環境に類似した炎症様の環境であり、TLR4内因性リガンドであるS100A8が引き金となる。本研究では、S100A8のTLR4/MD-2結合領域を標的としたS100A8多価型ペプチドが大腸がんxenograftモデルにて腫瘍増殖を抑制することを見いだした。また、急性呼吸窮迫症候群の発症にS100A8を介したTLR4/MD-2経路が関与することを示唆し、S100A8-TLR4/MD-2経路はがんだけでなく、様々なS100A8が関与する疾患の分子標的となる可能性を示唆した。
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