研究課題
昨年度は老化細胞やがん細胞で、DNA/RNAハイブリッドが産生され蓄積する分子メカニズムを明らかにするために、正常細胞に比べて老化細胞やがん細胞で発現が大きく変動する遺伝子群に着目し、DNA/RNAハイブリッドの産生と細胞内蓄積に関与する可能性のある遺伝子を同定した。そこで本年度は引き続き、この候補因子のデグロン細胞株を作成し、オーキシンデグロンシステムを用いて機能欠失細胞で解析を行ったところ、がん細胞株においても細胞質内への核酸断片の蓄積と炎症性遺伝子(SASP遺伝子)の発現が誘導された。また、老化細胞においてDNA/RNAハイブリッドを認識する核酸センサーを同定する目的でスクリーニングを行ったところ、SASP関連遺伝子の発現に関わるセンサーを見出した。さらに、DRIP(DNA/RNAハイブリッドに対する抗体を用いた免疫沈降)シークエンス解析を行い、がん細胞や老化細胞でDNA/RNAハイブリッドが過剰に産生されている領域を特定した。候補因子のコンディショナルノックアウトマウスを作成したが、動物室への入室制限等により飼育・表現型解析を行うことができなかったため、令和3年度に引き続き解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度は緊急事態宣による研究所への出勤制限と動物飼育室への入室制限により、研究の推進が大幅に遅れてしまった。そのため、翌年度に繰り越し申請を行い、令和3年度に併せて研究を行った。
DNA/RNAハイブリッドの産生と細胞内蓄積に関与する可能性のある遺伝子をヒト正常線維芽細胞やマウス正常線維芽細胞に過剰発現することで、細胞質核酸断片の産生を抑制し、SASP因子の遺伝子発現を抑制できるかどうか検討する。また、若齢マウスと老齢マウスのサンプルを用いて、本研究から明らかにしたDNA/RNAハイブリッド産生機構が個体老化においてもSASP産生に関与しているかどうか解析を行う。さらに、前年度に遂行できなかったコンディショナルノックアウトの樹立と表現型解析を行う。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (4件)
Angewandte Chemie Int. Edi.
巻: 60(4) ページ: 2125-2129
10.1002/anie.202013265.
Cell Reports
巻: 34(8) ページ: 108779
10.1016/j.celrep.2021.108779.
J. Biochem.
巻: 169(2) ページ: 147-153
10.1093/jb/mvaa109.
Nature Communications
巻: 11 ページ: 1935
10.1038/s41467-020-15719-6.
International Journal of Molecular Sciences
巻: 21(10) ページ: 3720
10.3390/ijms21103720.