研究課題/領域番号 |
19H03511
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
熊谷 泉 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10161689)
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研究分担者 |
田中 良和 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20374225)
真壁 幸樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (20508072)
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80323103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二重特異性抗体 / マルチスケール解析 / 次世代抗体設計 |
研究実績の概要 |
本研究では最先端のマルチスケール解析により、二重特異性抗体で架橋された、がん細胞と免疫細胞のインターフェイスを描像し、空間配置の違いが、如何に細胞間架橋の違いをもたらし、また超高活性化を引き起こすのかを明らかし、さらにその一般性を検証することを目的としている。 本年度は、前年度に引き続き、主に1. 顕微鏡観察による細胞同士の動的会合イベントの理解、および2. クライオ電子顕微鏡を用いた二重特異性抗体-標的抗原複合体の観察、の観点から研究を進めた。 1.顕微鏡観察による細胞同士の動的会合イベントの理解 前年度、がん細胞、およびT細胞株を播種したプレートに、二重特異性抗体を添加し、個々の細胞の動的挙動と、がん細胞殺傷の過程を光学顕微鏡で経時観察したところ、より明瞭な判別には詳細な条件検討を行う必要があることが明らかになったため、それぞれの細胞種や播種密度、添加する抗体濃度、さらには反応時間などの検討を行った。しかしながら、二重特異性抗体の分子構造の違いがもたらす細胞間架橋能の違いの理解には至らなかったため、原子間力顕微鏡を用いた細胞間架橋度測定を進めた。 2.クライオ電子顕微鏡を用いた二重特異性抗体-標的抗原複合体の観察 前年度、Fabをモデルとして使用し、透過電子顕微鏡ネガティブ染色法による観察を行った結果、二重特異性抗体の分子構造の違いを議論するに足る解像度であったため、本年度は、実際に既存の抗体医薬との結合活性、および構造比較を進めた。結果、抗原への結合活性は同等であっても、結合領域は完全にはオーバーラップしていないことが明らかになり、これにより研究対象である二重特異性抗体は、既存抗体医薬で問題となっているエスケープ変異を回避できる可能性が示された (Sci Rep 2021;11(1):5790) 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に引き続き、二重特異性抗体の分子構造の違いがもたらす超高活性化機構の解明に向けて、主に1. 顕微鏡観察による細胞同士の動的会合イベントの理解、および2. クライオ電子顕微鏡を用いた二重特異性抗体-標的抗原複合体の観察、の観点から研究を進めた。 1.に関しては、細胞種や播種密度、添加する抗体濃度、さらには反応時間などの検討を行ったものの、二重特異性抗体の分子構造の違いがもたらす細胞間架橋能の違いの理解には至らなかった。しかしながら、原子間力顕微鏡を用いた細胞間架橋度測定を進めた結果、二重特異性抗体の分子構造の違いと相関がみられる結果を得ることができた。一方、2.に関しては、前年度、Fabをモデルとして使用して得た、透過電子顕微鏡ネガティブ染色法による観察結果を基に、既存の抗体医薬との結合活性、および構造比較を進めた。結果、抗原への結合活性は同等であっても、結合領域は完全にはオーバーラップしていないことが明らかになり、これにより研究対象である二重特異性抗体は、既存抗体医薬で問題となっているエスケープ変異を回避できる可能性が示されたため、研究の進捗を総合的に判断し、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
1.に関しては、原子間力顕微鏡を用いた細胞間架橋度測定による解析を進めた結果、二重特異性抗体の分子構造の違いと相関がみられる結果を得ることができたため、今後は本手法に注力し、種々の二重特異性抗体の細胞間架橋度を測定し比較する予定である。 2.に関しては、電子顕微鏡に基づく抗体抗原複合体の構造解析の有用性が示されたため、ブレビバチルス菌発現系も活用しつつ、分子構造の異なる二重特異性抗体と両標的抗原を大量調製、複合体化させ、電子顕微鏡観察へと進める予定である。
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