本年度は、ポリL乳酸(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、あるいは脂質オレイル基を末端に持つポリエチレングリコール(BAM)でコーティングした窒化ホウ素ナノ粒子の細胞内局在を確認した。 研究開始年度に、各種窒化ホウ素ナノ粒子と細胞核、細胞質、細胞膜との共局在を観察しているものの、共局在が見られる細胞の割合については言及していなかった。また、使用した窒化ホウ素ナノ粒子の粒径も70 nmのみで、粒径による取り込み増減は不明であった。これらのデータを取得するため、3種コーティングした70 nmの窒化ホウ素ナノ粒子に加え、200 nmと500 nmのPLLコーティングした窒化ホウ素ナノ粒子も作製した。T98GとU251MGの細胞株を用いて、曝露1時間後での細胞取り込み量をICP-AESで測定した結果、粒径が大きいほど取り込みが増加し、70 nmより500 nmで有意に取り込み量が増加した。 共局在を確認する際には、各種窒化ホウ素ナノ粒子をFITCで蛍光標識するとともに、細胞核、リソソームあるいはミトコンドリアを蛍光染色して撮像した。ImageJを利用し、共局在を示す細胞数の割合を求めた。リソソームとの共局在はPLLよりPEIコーティングのほうが多く、ミトコンドリアとの共局在は逆の傾向が見られ、いずれも70%程度の細胞が共局在を示した。細胞核との共局在は、PLLコーティングでは7%、PEIコーティングでは22%程度であった。BAMコーティングではリソソームとミトコンドリアで73%、細胞核で31%程度の共局在となったが、細胞膜への結合が予想されるため、今後3次元的な解析も要する。これらから、サンプルごとに局在が異なることを確認した。 細胞内局在とBNCT効果との関係を中性子照射実験で検討する予定であったが、小型中性子発生装置の修理が必要となり、当該年度での実施ができなかった。
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