研究課題/領域番号 |
19H03525
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
旦 慎吾 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子薬理部, 部長 (70332202)
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研究分担者 |
近藤 格 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (30284061)
礒山 翔 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子薬理部, 研究員 (10843394)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肉腫 / 機能ゲノミクス / 遺伝子依存性 / 薬剤感受性 / 分子標的薬 / ケミカルゲノミクス |
研究実績の概要 |
肉腫は、骨や軟部組織などの非上皮組織から発生するがんで、上皮組織由来の癌腫に比べ発生頻度が希少であるなどの理由から治療薬の開発が遅れている。本研究開始以前、我々は14種の細胞株からなる肉腫パネルを構築し、肉腫および癌腫で承認されている化学療法剤や分子標的抗がん剤の感受性を測定して結果を発表している。本研究では、上記肉腫パネルを拡張するために、新たな細胞株を樹立・収集し、パネルの充実化を図るとともに、開発中の各種分子標的抗がん剤の感受性を測定する。また、次世代シーケンスを用いた全エクソーム解析(WES)、RNAシーケンス解析(RNA-seq)、ゲノムワイドの機能ゲノミクス手法であるshRNAスクリーンなどを駆使して、希少がんである肉腫の新たな創薬標的や効果予測バイオマーカーを見出し、画期的な新治療法を開発することを目的とする。 上記目的を達成するために、本年度(2020年度)は引き続き肉腫細胞株パネルの拡張を行い、患者由来細胞株(PDC)を含め36種の細胞株まで拡張した。これらのうち33細胞株について、WESおよびRNA-seqのためのDNA・RNAサンプルの抽出を行い、外部の研究者の協力を得てシーケンス解析を進めた。また、薬剤感受性解析については、昨年度先行して進めたPI3K阻害剤ZSTK474の感受性解析の結果、特定の染色体転座を有する肉腫サブタイプにアポトーシスを誘導すること、その抗がん作用にPIK3CA、PIK3CB、PIK3CDの同時抑制が重要なこと、PumaやBimといったアポトーシス誘導因子の発現上昇が関与することを明らかにした。また、ハイコンテントイメージング機器を用いて肉腫細胞株に代表的な抗がん剤を処理した後の細胞形態変化のプロファイリングを進めた。shRNAスクリーンに関しては、滑膜肉腫細胞株2株を用いて、細胞増殖・生存に重要な遺伝子の抽出を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き肉腫細胞株の樹立・収集を進め、新たに6細胞株を積み増しし36細胞株とした。本年度より外部研究者の協力を得て次世代シーケンス解析を進めることとし、現在までに33細胞株についてWES・RNA-seq解析が終了している。これらについて、昨年度に引き続き、当方で開発を進めているPI3K阻害剤ZSTK474の感受性を先行して調べたところ、滑膜肉腫やユーイング肉腫に加え、TLS-CHOP融合遺伝子を有する粘液型脂肪肉腫でもアポトーシスを誘導することが明らかとなった。また、ZSTK474に最も感受性の高かった滑膜肉腫では、PIK3CAに加え、PIK3CBやPIK3CDを同時に抑制することにより強い細胞死が認められることから、Pan-PI3K阻害剤であることが本剤が高い抗がん効果を示す要因であると考えられた。一方、ZSTK474処理後にPumaやBimといったアポトーシス誘導因子の発現上昇が認められること、これらの発現ノックダウンによりアポトーシス誘導が阻害されることから、滑膜肉腫におけるアポトーシス誘導にPumaやBimの発現誘導が関わっていることがわかった。その他の代表的な抗がん剤についても、ハイコンテントイメージング機器を用いたタイムラプス解析により抗がん剤処理後の細胞形態変化のプロファイリングを進めている。一方、ゲノムワイドなshRNAスクリーンについても本格的に研究を開始し、本年度は滑膜肉腫細胞株2株についてのデータを取り終え、順次その他の肉腫細胞株の実験を進めている。以上のとおり、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
代表的な抗がん剤に関する肉腫細胞株の感受性プロファイリングについては、本年度より開始したハイコンテントイメージング機器による詳細な形態変化プロファイリングを採用してデータ収集を進めていく。また、shRNAスクリーンも順調に動き始めたので、順次解析を進めていく。上記に加え、PI3K阻害剤ZSTK474が特定の肉腫サブタイプに選択的に細胞死を誘導する分子メカニズムをより詳細に解析する。
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