研究課題
がん種を問わず、一定の割合で長期生存がん患者が存在する。遺伝子変異由来の新生抗原(ネオアンチゲン)に対する免疫応答が、患者の長期生存に寄与している可能性がある。本研究では、長期生存肺がん患者を対象とし、手術(生検)時に採取された腫瘍から全エクソーム/RNAシーケンスを実施し、in silicoのアルゴリズムを用いて遺伝子変異由来のネオアンチゲンを予測する。患者の外来来院時に採血を行い、分離した末梢血単核球(PBMC)から、予測したネオアンチゲンに対する長期生存メモリーT細胞を、フローサイトメトリー、T細胞受容体(TCR)レパトア解析等で検出する。また、T細胞の認識するネオアンチゲンの特徴や腫瘍内の免疫関連遺伝子発現の検討する。さらに腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の免疫組織化学染色による病理学的な検討を加え、早期再発症例(コントロール)と比較することで、長期生存肺がん患者の抗腫瘍免疫応答を統合的に評価する。愛知県がんセンター倫理審査委員会で承認後、当センター呼吸器内科で抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤治療を受けた長期生存患者(治療開始日より、5年が経過する患者)のリストを作成し、臨床情報をまとめた。5年生存を超える症例の候補が23例存在し、現在、6カ月ごとに当センター外来を受診しているため、該当症例から採血を順次実施している。これまでに6症例から採血を実施した。新たな患者から採血を実施するとともに、過去の手術(生検)検体からDNA、RNAを抽出し、全エクソーム/RNAシーケンスを実施する予定である。
3: やや遅れている
当センター呼吸器内科で抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤治療を受けた患者で、長期生存患者のリストを作成し臨床情報をまとめた。これまでに、5年生存を超える肺癌6症例から採血を実施した。目標は10症例であったため、少し遅れている。
この1年で少なくともあと4例の長期生存患者から採血を実施する予定である。半年ごとの来院で計2回実施できた症例では、その患者の手術・生検時の凍結検体あるいはFFPE検体からDNA、RNAを抽出し、エクソームシーケンス、RNAシーケンスを実施する。遺伝子変異から生じる異常なタンパク由来の候補ネオエピトープをin silicoのアルゴリズ(NetMHCpan)を用いて予測する。予測された抗原に対するT細胞の反応性をPBMCを用いて検討する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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