現代の生命科学、脳神経科学において、遺伝子導入技術は極めて重要な基盤技術の一つであり「ライフサイエンス技術の扇の要」である。しかしながらこれまで、自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」を開発するのは困難であった。 本研究課題の第一の目的は、新たな戦略を用いて、従来からあった技術的障壁を克服し、自在性のある「遺伝子導入ウイルス技術」を開発することである。そして第二の目的は、この新戦略技術と神経活動を不活性化させるKir2.1、微小内視蛍光顕微鏡による神経活動イメージング法を用いることにより、「局所脳領域において神経活動依存的な細胞競合によって神経回路やシナプスが精錬され調節される」という有力な仮説の検証を行うことである。 令和3年度においては、コロナウイルスの蔓延の影響により、第二の目的に用いる微小内視蛍光顕微鏡イメージングの実験担当者が研究実施することが困難になった事情があったことから、その状況に柔軟に対処し、第一の目的を重点的に推進し、発展させた。これまでの「BATTLE」技術は、レンチウイルスを用いていることから、P2のバイオハザードレベルで、動物実験を行う必要(制約)があった。この実験的制約を改善するために、P1レベルのバイオハザードで実験可能となるAAVのみを用いた「オールAAV-BATTLE」技術のウイルス作成に成功した。この「オールAAV-BATTLE」技術は、アクチンプロモーターを用いているため、脳神経系以外の、医学生物学研究に幅広く適用されうる可能性を持つことから、将来的に、さらに広範囲の生命科学において、基盤的に活用されることが期待される。さらに、これまでの「BATTLE」技術の反発分離の自在性を格段に高めるため、薬剤投与によってBATTLEが開始する新規遺伝子組換え「BATTLE」マウスの開発を行なった。
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