研究実績の概要 |
本研究の目的は、常に変化するダイナミックな脳活動状態をほぼリアルタイムに同定し、それに基づいた非侵襲的脳刺激をすることでヒトの認知的柔軟性に関わる因果論的神経基盤を同定することである。さらにはその手法を高機能自閉スペクトラム症当事者に適用することを目指す。これらによって、彼らの認知的硬直性を生み出している神経動態を明らかにし、そこに非侵襲的に介入する手法の基盤を開発することも目的としている。
2020年度はまず、脳活動依存型脳刺激装置の開発及びその性能の検証を引き続き行った。脳活動をほぼリアルタイムに解析・同定するための要素技術として、エネルギーランドスケープ解析の拡張を完成させた。加えて、新規に開発したリアルタイム脳波(Electroencephalography, EEG)データ前処理システムと非侵襲的経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation , TMS)、そしてこの拡張型エネルギー地形解析と組み合わせた。これにより脳活動依存型神経刺激システムを確立した。コロナ禍の影響もあり、なかなか進まない実験もあったが、この性能を検証するため、65人以上の健常被験者を用いた心理実験は実施することができた。この結果、この脳活動依存型神経刺激装置が実際のデータ取得・解析から磁気刺激実施までどの程度のタイムラグを持っているのか、という点や、刺激の空間分解能、ノイズに対する耐性などを定量化することができた。その後、この性能が確認された実験系を用いることで、視覚認知の柔軟性に関する本実験を開始した。
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