学習による小脳構造マクロ可塑性の神経生物学的機構の解明研究

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19H03536
• 研究機関: 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
• 研究代表者: 花川 隆 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 部長 (30359830)
• 研究分担者: 阿部 弘基 横浜市立大学, 医学部, 助教 (40737409) ; 星野 幹雄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 病態生化学研究部, 部長 (70301273)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 神経可塑性

研究実績の概要

NCNP花川と菅井は、実験の条件検討を行ったのち、6匹を実験群、7匹をコントロール群として3日間のオペラント学習の前後でAMPA（11C-K2）PET計測を行った。学習個体5匹、コントロール個体5匹を用いて中間解析を行った。集団解析を行う上で各データを標準化するため、11C-K2テンプレートが存在しなかったため、まず分布が類似していたFDG-PET画像を用いた解剖学的標準化を行った。標準化処理した後、既に我々が得ているVBM解析の結果から得た小脳灰白質上の体積変化部位を関心領域として適応し、SUVRを検討したところ、データに固体間で大きなばらつきが見られた。より精度を高めた検討をするため、11C-K2に特異的なテンプレートを新たに作成した。今後はこのテンプレートを用いた標準化を行い、さらにサンプル数を増やして解析していく予定である。また今後組織学的な評価を行うため、PET実験終了後、還流固定を行い、コンパウンドで包埋処理を行った後、-80℃下で保存している。NCNP星野と連携し、3個体で小脳スライスを作成し、ニッスル染色を行ったところ、皮質形態に大きな個体差が確認された。これを踏まえてスライス作成の作成法を検討する予定である。他に星野は、UTS2分子が、興奮性シナプスの数を制限する機能を持つことを見出し、さらにDSCAM分子が生まれたての神経細胞の終足を脳室面から剥がす過程に関与していることを明らかにした。また横浜市立大阿部はNCNP菅井氏と共同で動物AMPA PET撮像方法の検討を行うとともに、ヒト脳梗塞患者のリハビリ過程でAMPA PETを行いリハビリによる運動再学習過程におけるAMPA受容体密度変化を検討した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

学習実験は順調に進捗しており、AMPA PET実験も予定通り進み、AMPA PETデータの解析を行うとともに、組織検索用の学習個体由来の能標本も蓄積している。顕微鏡の導入も終了した。ラットの小脳の個体差が予想以上に大きいことが判明したことから、組織学的検討の実施が遅れているが、十分に取り戻せると考えている。また、学習によるヒト脳マクロ可塑性について業績を上げることができた（Hosoda et al. 2020 Commn Biol）。

今後の研究の推進方策

今後、ラットAMPA PETの標準化脳を完成させ、ボクセルレベルでの解析を進めることで、オペラント学習によるAMPA型グルタミン酸受容体の変化を全脳レベルで解明する。特にMRIで容積増加がみられている小脳に焦点を置くが、それ以外の場所の変化の可能性も排除しない。必要に応じてNや実験条件を追加する。AMPA PETの結果を参考に、AMPA PET実験時に灌流固定した標本を用いて、R1年度に導入した顕微鏡と各種染色を用いた組織学的な検討を本格化させる。小脳で学習前後にAMPA PETの取り込みが上昇あるいは低下している証拠が得られれば、AMPA型グルタミン酸受容体を中心に免疫染色を行い、その分布が学習前後でどのように変化するかを明らかしていく。

研究成果

• [雑誌論文] Plastic frontal pole cortex structure related to individual persistence for goal achievement (2020)
  • 著者名/発表者名: Hosoda Chihiro、Tsujimoto Satoshi、Tatekawa Masaru、Honda Manabu、Osu Rieko、Hanakawa Takashi
  • 雑誌名: Communications Biology 巻: 3 ページ: 194
  • DOI: 10.1038/s42003-020-0930-4
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] AUTS2 Regulation of Synapses for Proper Synaptic Inputs and Social Communication (2020)
  • 著者名/発表者名: Hori K、Yamashiro K、Nagai T、Shan W、Egusa Saki F.、Shimaoka K、Kuniishi H、Sekiguchi M、Go Y、Tatsumoto S、Yamada M、Shiraishi R、Kanno K、Miyashita S、Sakamoto A、Abe M、Sakimura K、Sone M、Sohya K、Kunugi H、Wada K、Yamada M、Yamada K、Hoshino M
  • 雑誌名: iScience 巻: 23 ページ: 101183～101183
  • DOI: 10.1016/j.isci.2020.101183
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Impaired Adaptive Motor Learning Is Correlated With Cerebellar Hemispheric Gray Matter Atrophy in Spinocerebellar Ataxia Patients: A Voxel-Based Morphometry Study (2019)
  • 著者名/発表者名: Bando Kyota、Honda Takeru、Ishikawa Kinya、Takahashi Yuji、Mizusawa Hidehiro、Hanakawa Takashi
  • 雑誌名: Frontiers in Neurology 巻: 10 ページ: 1183
  • DOI: doi: 10.3389/fneur.2019.01183
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Neuroanatomical Basis of Individuality in Muscle Tuning Function: Neural Correlates of Muscle Tuning (2019)
  • 著者名/発表者名: Kita Kahori、Osu Rieko、Hosoda Chihiro、Honda Manabu、Hanakawa Takashi、Izawa Jun
  • 雑誌名: Frontiers in Behavioral Neuroscience 巻: 13 ページ: 28
  • DOI: doi: 10.3389/fnbeh.2019.00028
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Molecular imaging of functional recovery process aiming for a development of rehabilitation accelerating agent (2019)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Abe, Susumu Jitsuki, Waki Nakajima, Yumi Murata, Aoi Jituski-Takahashi, Tomoyuki Miyazaki, Hirobumi Tada, Akane Sano, Kumiko Suyama. Nobuyuki Mochizuki, Takashi Komori, Hitoshi Masuyama, Tomohiro Okuda, Yoshio Goshima, Noriyuki Higo, Takuya Takahashi
  • 学会等名: 第42回日本神経科学会NEURO2019
• [学会発表] Cerebellar macroneuroplasticity following operant conditioning learning in rats as studied by MRI. (2019)
  • 著者名/発表者名: Sugai C, Hori Y, Hanakawa T
  • 学会等名: 第42回日本神経科学会NEURO2019
• [備考] 脳統合イメージング
  • URL: http://www.med.kyoto-u.ac.jp/organization-staff/research/doctoral_course/r-017/