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2020 年度 実績報告書

脳内炎症が引き起こすRNA編集異常が精神疾患様行動異常をもたらす機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03538
研究機関富山大学

研究代表者

高雄 啓三  富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (80420397)

研究分担者 吉田 知之  富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (90372367)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード胎生期ストレス / 自閉症 / RNAスプライシング / シナプス / 炎症
研究実績の概要

大脳皮質が形成され、神経ネットワークができる胎生後期の脳は外的撹乱の影響を受けやすいが、この時期の脳に発現する遺伝子群の異常も脳の器質的な障害に結びつきやすいと考えられる。シナプスオーガナイザーの遺伝子はこれまで20種類程度知られているがその多くが脳で発現し、RNA に転写される際に繋ぎ変え編集、すなわちエクソン選択による編集を受けて多様なタンパク質が作り出されることでシナプスは多様となる。本研究では、精神疾患モデルマウスの脳においてシナプスオーガナイザー遺伝子の RNA スプライシングを調べ、その制御機構と精神疾患との関係を明らかにする。
母体への Polyinosinic-polycytidylic acid (Poly(I:C)) 投与によって、産仔に自閉症様行動異常を誘発する母体免疫活性化モデルマウスを用いて、胎児および産仔脳内で 3つの微小エクソンをもつシナプスオーガナイザー遺伝子の一つである PTPδ の遺伝子である Ptprd についてスプライシング選択比率を PCR フィンガープリント法にて解析した。Poly(I:C)投与群から得られた胎児では特定の微小エクソンの選択比率がコントロール群に比べて有意に減少しており、生後ではそれらの差が見られなかった。母体免疫活性化は胎生期の脳において一過的にこの遺伝子の微小エクソンの選択調節を撹乱することが示唆された。また、 PTPδ がシナプスを形成する際に結合する分子として neuroligin 3が明らかとなり、 PTPδ と結合できなくなる変異が導入された neuroligin 3を持つマウスでは社会性発達が抑制された。これらのことから母体炎症によって生じた自閉症様行動のうちの社会的行動の異常は PTPδ の選択的スプライシングの異常により neuroligin 3 との結合が低下したためという仮説が立てられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シナプスの分化誘導を担う主要なシナプスオーガナイザーの一つである PTPδ の遺伝子である Ptprd について、Polyinosinic-polycytidylic acid (Poly(I:C)) 投与による母体炎症モデルで得られた産仔の脳における微小エクソン選択比率について当初想定した実験を進めることができている。また、シナプスが形成される際に PTPδ が結合する相手分子についての知見については共同研究として論文発表することができた。このように本研究は順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

これまで Polyinosinic-polycytidylic acid (Poly(I:C)) 投与による母体炎症モデルから得られた胎児や産仔の脳について解析を行ってきた。この実験系により一定の成果が得られているが、Poly(I:C) 投与による母体炎症モデルでは産仔の多くが死亡してしまうと言う問題点が明らかになった。Poly(I:C) 投与は母体に対する負荷が大きすぎることが原因だと考えられる。そこで、今後は遺伝的に炎症が亢進しているマウス系統を母体として用いることでこれらの問題を解決し、母体の炎症が産仔マウスの脳におけるシナプスオーガナイザー遺伝子の選択的スプライシング比率に与える影響を解析していく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Mice with mutations in Trpm1, a gene in the locus of 15q13.3 microdeletion syndrome, display pronounced hyperactivity and decreased anxiety-like behavior.2021

    • 著者名/発表者名
      Hori T, Ikuta S, Hattori S, Takao K, Miyakawa T, Koike C.
    • 雑誌名

      Mol Brain

      巻: 14(1) ページ: 61-61

    • DOI

      10.1186/s13041-021-00749-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Canonical versus non-canonical transsynaptic signaling of neuroligin 3 tunes development of sociality in mice.2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshida T, Yamagata A, Imai A, Kim J, Izumi H, Nakashima S, Shiroshima T, Maeda A, Iwasawa-Okamoto S, Azechi K, Osaka F, Saitoh T, Maenaka K, Shimada T, Fukata Y, Fukata M, Matsumoto J, Nishijo H, Takao K, Tanaka S, Okabe S, Tabuchi K, Uemura T, Mishina M, Mori H, Fukai S.
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 12(1) ページ: 1848-1848

    • DOI

      10.1038/s41467-021-22059-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Heterogeneity of microglial proton channel in different brain regions and its relationship with aging2021

    • 著者名/発表者名
      Kawai Takafumi、Takao Keizo、Akter Sharmin、Abe Manabu、Sakimura Kenji、Miyakawa Tsuyoshi、Okamura Yasushi
    • 雑誌名

      Journal of Neurochemistry

      巻: 157(3) ページ: 624-641

    • DOI

      10.1111/jnc.15292

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vascular PDGFR-alpha protects against BBB dysfunction after stroke in mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Nguyen QL, Okuno N, Hamashima T, Dang ST, Fujikawa M, Ishii Y, Enomoto A, Maki T, Nguyen HN, Nguyen VT, Fujimori T, Mori H, Andrae J, Betsholtz C, Takao K, Yamamoto S, Sasahara M.
    • 雑誌名

      Angiogenesis

      巻: 24(1) ページ: 35-46

    • DOI

      10.1007/s10456-020-09742w

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Maternal dietary imbalance between omega-6 and omega-3 fatty acids triggers the offspring's overeating in mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Sakayori N, Katakura M, Hamazaki K, Higuchi O, Fujii K, Fukabori R, Iguchi Y, Setogawa S, Takao K, Miyazawa T, Arita M, Kobayashi K.
    • 雑誌名

      Commun Biol

      巻: 3(1) ページ: 473-473

    • DOI

      10.1038/s42003-020-01209-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Temperature elevation in tissue detected in vivo based on statistical analysis of ultrasonic scattered echoes.2020

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi M, Sakai T, Andocs G, Takao K, Nagaoka R, Hasegawa H.
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 10(1) ページ: 9030-9030

    • DOI

      10.1038/s41598-020-65562-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] マウスにおけるゲノム編集と行動解析を起点とした『こころ』の研究.2021

    • 著者名/発表者名
      高雄啓三
    • 学会等名
      公益社団法人日本心理学会若手の会 異分野間恊働懇話会 2021
    • 招待講演
  • [学会発表] ダウン症モデルマウスの大脳新皮質において発生異常が引き起こされる分子メカニズム.2020

    • 著者名/発表者名
      倉林伸博,高雄啓三
    • 学会等名
      第43回 日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 超音波散乱波統計解析による癌温熱治療中の腫瘍組織 内温度 上昇の非侵襲測定.2020

    • 著者名/発表者名
      竹内道雄,坂井俊彦,Andocs Gabor,高仲強,高将司,山下国子,川原昌宏,野尻智子,田中麻 香,則島あずさ, 尾本吉隆,大村眞朗,長岡亮,高雄啓三,長谷川英之.
    • 学会等名
      第41回 超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム
  • [学会発表] 非調和解析(NHA)を用いたマウス呼吸の時間周 波数解析.2020

    • 著者名/発表者名
      淺野雄輝,藤井一希,長谷川昌也,廣林茂樹,高雄啓三.
    • 学会等名
      第67回日本実験動物学会総会
  • [学会発表] 共母体免疫活性化は胎児の脳における Ptprd 遺伝子微小 エクソン選択調節を撹乱する.2020

    • 著者名/発表者名
      藤村耕平,仙道水月,藤井一希,吉田知之,高雄啓三.
    • 学会等名
      第67回日本実験動物学会総会
  • [学会発表] ラジオ波加熱されたラット腫瘍内の超 音波散乱波統計波の統計解析による温度変化測定.2020

    • 著者名/発表者名
      竹内 道雄,坂井 俊彦,Andocs Gabor, 高雄 啓三,長岡 亮,長谷川 英之.
    • 学会等名
      日本超音波医学会第93回学術集会

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公開日: 2021-12-27  

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