研究課題
本研究は、マカクサルとラットを用いて、ストレス下の認知・行動変容のメカニズムを、拡張扁桃体→大脳基底核相互関係とそれらのセロトニン制御の変化として明らかにする。しばしば観察される衝動性や嫌悪刺激への過剰な反応は、情動情報処理を担う扁桃体から、意思決定の神経基盤である大脳基底核への回路とそれらのセロトニンによる修飾の変容による脱抑制機能の破綻の結果である可能性を検討することを目的とした。中村・安田はマカクサル2頭については光遺伝学的操作後に、ウイルスベクター注入部(背測縫線核)だけでなく、黒質網様部・緻密部・腹側被蓋野といった背測縫線核セロトニン細胞の投射先でも、TPH2 GFP共染色を確認した。非特異的染色の可能性を除外するため、ベクターを用いていないコントロールとしてのカニクイサル脳の染色も行い、確認した。一方、セロトニン特異性は十分とは言えなかった。少なくとも背測縫線核ー黒質投射の経路選択的操作がなされたことを確認できた。永安は前年度に引き続き組織学的解析(TPH2,SERT,GFP)を進めるとともに、ラットでの光遺伝学的解析に必要となるウイルスベクターを作製した。山中はラットにおいて報酬、無報酬、嫌悪刺激(エアパフ)と連合した3種類の手がかり刺激CSを学習させる古典的条件づけ課題を各刺激1日40試行ずつラットに課し、5-7日(200~280試行)で報酬予測的な昇圧応答が獲得されることを観察した。永安により提供されたウイルスベクターを用いて、この古典的条件づけ課題中に視床下部外側野から扁桃体基底外側核への経路を光遺伝学的に活性化させる実験を実施した。結果はFront Physiologyに出版できた。
2: おおむね順調に進展している
サルについては論文化に必須の組織解析がほぼ完了したので、データをまとめ、行動解析や神経細胞活動記録の解析と合わせて論文化することができる。ラットにおいても、光遺伝学実験のセットアップが進み、永安の作成したウイルスベクターを用いた実験について論文化できた。
サル(安田・中村・永安)においては、組織解析の結果を合わせて、背測縫線核とその投射部位である黒質網様部・緻密部・腹側被蓋野の光遺伝学的操作による反応時間の変化について論文執筆を進める。げっ歯類と霊長類という異なる種におけるセロトニンmodulationによる、異なる情動下での心拍・血圧変化についてのreviewをまとめていく。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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