研究課題/領域番号 |
19H03541
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植松 朗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任講師 (90716242)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前頭前野 / 消去 / 光遺伝学 / イメージング / 神経回路 |
研究実績の概要 |
本研究では動物モデルを用いて、情動記憶の上書きに重要な腹内側前頭前野(vmPFC)の神経群についてマイクロレベルでの神経回路を解明しようと試みている。2019年度においては光遺伝学を用いることによりvmPFCからの4種類の投射先について、それぞれの恐怖と報酬記憶の消去課題での機能について検討を行った。最初に、投射部位としては、扁桃体基底外側核(BLA)・内側側坐核(mNAc)・中脳水道周囲灰白質(PAG)・背内側前頭前野(dmPFC)の4か所を解剖学的に選択した。それぞれの脳部位に新規に作製したマルチプレックス逆行性ウイルスベクターを投与するとそれぞれの投射集団はvmPFCにおいてお互いに重なりは少なく、独立した集団であることが明らかとなった。次に、それぞれの脳部位に逆行性ウイルスを投与することによりCreをvmPFC発現させ、vmPFCにCre特異的なウイルスを投与することによりNpHRもしくはGFPを投射細胞に発現させ、光ファイバーをvmPFC上に留置した。恐怖条件づけでは音に続いて電気ショックを与え、報酬学習では20秒の音の間に5秒間スクロース溶液が提示されるタスクを用いた。消去学習においては音のみを提示し、音の間に光を照射した。これまでの報告通り、BLA投射を抑制すると恐怖消去が阻害された。また、報酬記憶の消去にもBLA投射が関与することが明らかとなった。mNAcについては恐怖消去に関与するが、報酬記憶の消去には関与しなかった。一方、dmPFCは報酬記憶の消去にのみ関与し、PAG投射群を抑制すると恐怖消去が促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にはフリームービング動物におけるカルシウムイメージングを行い、vmPFCの神経活動表象を明らかにする。また本研究では開発した新規手法にて、同一個体より数種類の投射神経群の活動を網羅的に観察することを試みる。具体的には、GRIN lensを通したシグナルは多光子顕微鏡により同じ場所を観察することが可能で、より鮮明にかつ様々な蛍光色でみることが可能である。そのため、細胞におけるカルシウム変動をみるGCaMP(緑色)のほかに青、赤、近赤外といったシグナルを2光子顕微鏡で観察し、これをminiscopeの画像と一致することで神経群を同定することが可能である。これまで、申請者は新規の逆行性ウイルスを用いることで蛍光色と細胞局在の異なるシグナルを観察できている。
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