研究実績の概要 |
薬物抵抗性の難治てんかん患者において、手術による切除標本から神経活動を光学的イメージング法により解析し、病理学的所見との対比によるてんかん原性の検討を行った。主な対象患者は海綿状血管腫(CA), 限局性皮質異形成(FCD)、結節性硬化症(TSC)、海馬硬化症(HS)であった。 手術により切除されたてんかん焦点組織はただちに手術室内において、氷冷人工脳脊髄液中に入れられ、95%酸素5%二酸化炭素の混合ガスでバブリングしながら実験室へ輸送した。手術室内で500ミクロン厚の脳スライス標本を、神経細胞の活性を維持したまま作製した。FCD, TSC, HSで異なった異常興奮波の発生様式ならびにその興奮伝播様式を捉えることが可能となった。すなわち、CAにおいては病理組織学的なヘモジデリン沈着部位に加え、反応生アストロサイトの増勢が見られる領域から強い興奮伝播特性を認めた。また、FCDにおいては焦点組織内の病理組織学的にDysmorphic Neuronの認められる部位に一致して高頻度の自発発火が見られた。Balloon cellとの空間的関連は低かった。TSCではDysmorphic Neuronの分布領域とは異なった隣接領域から微弱な自発発火が見られ、その興奮波がDysmorphic Neuronの分布領域に侵入すると増強され、強い興奮波となって戻されることが明らかとなった。HSでは歯状回において苔状線維発芽により形成された反響回路で増幅される経シナプス性の高頻度発火を認め得た。FCD例において、新規抗てんかん薬候補化合物E2730を管理流した結果、濃度依存性に自発性の異常興奮が抑制される様子が明らかとなった。さらにこの抑制様式はカルバマゼピンによる抑制様式とは異なるものであり、新規性の高い候補化合物であることが示唆された。
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